挑戦 〜海賊の財宝を求めて〜
前回の冒険で、東町の役人達と月の森のエルフ達を救った一行。その後約束通り、満月の夜に月の森で開かれるお祭りに参加して、楽しい夜を過ごしました。
それから2週間ほど経ったある日…
レオン 「あー…金がねぇ…」
そうぼやきながら表通りを歩くNEETが1人…そこに…
乞食 「ちょっと、ちょっとそこの兄さん。」
レオン 「へ? 俺のことか?」
乞食 「そうそう、アンタだよアンタ。…へっへっへっ…いいものがあるんじゃが、コイツを買わないか?」
ボロ切れを纏っただけのみすぼらしい姿をした老人がレオンに声をかけてきました。彼は懐にしまっていた一本の筒から、一枚の古びた紙切れを取り出しました。
レオン 「なんだそりゃ、地図か?」
乞食 「そうじゃ。こいつはな…あの伝説の海賊、キャプテン・ファルコが死の間際に隠した財宝の在り処を示した地図なんじゃ!」
レオン 「キャプテン・ファルコだって!?」
乞食 「なんじゃ兄さん、知っとるのか? 若いのに物知りじゃな。」
レオン 「知ってるさ! 俺もガキの頃はファルコの冒険記を読んで、海賊に憧れたもんだ。」
乞食 「そうかそうか。」
レオン 「で、その地図がファルコの財宝の在り処を記した地図なんだって?」
乞食 「ああ、そうじゃ。しかし…どいつもこいつも偽物に決まってるって疑ってな…わしも困っとるんじゃ。」
レオン 「……………………。」
乞食 「わしは見ての通りの乞食じゃからな。明日の食事にすら頭を抱える身分じゃ。だからこいつを売り払ってしまいたいんじゃ。」
レオン 「自分で財宝を取りに行けばいいじゃん?」
乞食 「確かに。じゃが、わしは冒険者でも何でもない。そんな手に入りっこないお宝よりも、目先の金貨の方がずっと大事だというわけじゃ。」
レオン 「まぁ、そうかもな。冒険者雇うのにも金がいるし…」
乞食 「そこでどうじゃ? こいつを金貨500枚で買わないか?」
レオンは自分の部屋にある金貨の枚数を脳内でカウントしました。
レオン 「…………。 (だめだ…多分200枚ぐらいしか持ってねぇ…)」
乞食 「ダメなら、他に買ってくれそうなやつを教えてくれるだけでもいいんだが…」
レオン 「(そうだ! 足りないなら借りればいいんだ!) ちょ、ちょっと待ってくれ! そこの酒場の2階に俺の部屋があるんだ!」
乞食 「ほうほう。」
レオン 「この前の冒険で手に入れた金が残ってるから、そいつで俺が買うよ!」
乞食 「本当か!? いやー、助かったぞ!」
レオン 「よし、じゃあ行こうぜ。酒場はすぐそこだ。」
こうしてレオンは乞食の老人を引き連れて、ブレイヴ・クルーズ・インへと引き返しました。
ディザーカ 「いらっしゃ…って、あれ? レオンじゃないか。出かけたんじゃなかったのか?」
レオン 「いや、ちょっと用事があってな。 …それよりディザーカ…金貨300枚ぐらい貸してくれないか?」
ディザーカ 「ん? 別にいいけど、どうするんだ?」
レオン 「へへへ、宝の地図を買うんだよ。じゃ、部屋から持っていくぜ!」
ディザーカ 「………?」
こうして、費用を6:4でディザーカに負担させて、レオンは胡散臭い宝の地図を手に入れました。それから数時間後、ディザーカが休憩に入るタイミングでレオンが話を持ちかけました。
レオン 「ディザーカ、さっきはありがとうな。」
ディザーカ 「ああ、気にするなよ。それより、宝の地図ってどういうことだ?」
レオン 「ああ、見ろ! あの偉大なる大海賊、キャプテン・ファルコが遺した財宝の在り処が記された地図だ!」
ディザーカ 「キャプテン・ファルコ? 誰だそれ? 有名人なのか?」
レオン 「だぁーっ! 知らないのかよお前! ったく…いいか、キャプテン・ファルコってのはなぁ…」
〜数十分後〜
レオン 「…とまぁ、そういう人物だ。」
ディザーカ 「なるほど。んで、これがその財宝の在り処ってワケか。」
レオン 「そういうことだ。…というワケで、今回はこの地図を調べてみようぜ。」
ディザーカ 「よし、じゃああの2人も誘ってこよう! オッサン、休憩もらうぞ!」
バーク 「おう、好きにしろ!」
ブレイヴ・クルーズ・インを出てから東町を目指して歩き出した2人。魔法院の前を通りかかった時、偶然にも中から大量の書物を抱えたイリードが出てきました。
ディザーカ 「おーい! イリード!」
イリード 「あら、ディザーカじゃない。それとレオンも。」
レオン 「いいところで会ったな。お前今ヒマか?」
イリード 「ヒマそうに見えるの? っていうか、男ならこういう時は代わりに持ってあげるべきじゃないの?」
レオン 「そ、そういうことは自分で言うなよ…」
イリード 「だったら言われる前に気付きなさいよ!」
ディザーカ 「わ、わかったわかった、宿まで運べばいいんだろ? 俺が持ってやるよ。」
イリード 「当然よね。ま、一応お礼は言っておくわ。」
〜数分後、銀鈴館ホールにて〜
イリード 「それで、あたしに何か用なの?」
レオン 「ああ、海賊の宝の地図を手に入れたんだ。一緒に調べてみないか?」
イリード 「…別にいいけど…そんなのどこで手に入れてきたの?」
レオン 「え? あ、あははは! まぁ、ちょっといろいろあってな!」
イリード 「答えになってないじゃない。」
ディザーカ 「おーい! 何やってるんだお前ら! 早くしないと日が暮れちまうぞー!」
レオン 「あ、やべ! おい、急ぐぞイリード! その話はまた後だ!」
イリード 「え? あ、ちょっと待ってよ!」
レオン 「………。 (あっぶねー…借金して乞食から買ったなんて言ったら、何言われるかわからねーもんな。黙っとこ。)」
そして3人は最後の1人、アリシュアを誘うためにヒルガ大聖堂へと向かいました。
イリード 「ハァ、ハァ、…ったく、何なのよもう!」
ディザーカ 「この程度で息切らすなんて、運動不足だぞイリード。」
イリード 「全身筋肉のアンタと一緒にしないでよね!」
レオン 「ゼハー! ゼハー! し、死ぬ、死ぬ!」
イリード 「…って、何でアンタはあたしよりも苦しんでるのよ…」
アリシュア 「あら、みなさんお揃いで…何かご用ですか?」
ディザーカ 「宝探しだ! 一緒に行こうぜ!」
アリシュア 「はい?」
イリード 「もう、もっとちゃんと説明しなさいよ!」
レオン 「これ、この地図! ハァ、ハァ、一緒に調べませんか!」
アリシュア 「構いませんけど…あの、大丈夫ですか?」
レオン 「全然! 平気ッス!」
いろいろありましたが、こうして4人揃った一行。まずは地図をじっくりと観察してみることに。紙自体はずいぶん傷んではいるものの、描かれた地形はハッキリと識別できる状態。
<知識:地域>でロールした結果、描かれている地形がトーチ・ポート周辺のものと酷似していることが明らかになりました。その後、魔法院の図書館で再び知識ロール。すると今度は、地図に書き込まれた地名が今から遥か昔のもので、そのいずれも現在のトーチ・ポート周辺の地名であることが明らかになりました。どうやら財宝が隠された場所は、思ったよりも近くのようです。
今度は街に出て<情報収集>ロール。地図に書き込まれた×印の場所を判明させるための聞き込みを開始します。すると、ある漁師が有益な情報を渡してくれました。なんでも…大潮の時、干潮時にのみ姿を現す小さな洞窟が、だいたい地図の×印の位置と一致しているのだとか。ちょうど明日の夜からは新月、およそ4日間は大潮の日です。さっそく支度を整えて、翌日に備えることに。
翌日、準備を整えた一行は、漁師から教えてもらったポイントへ移動。普段こんなところへは来ないので、些細な違いには気付けないのですが、確かに小さな怪しい洞窟が目の前にありました。ランタンの灯りを頼りに、不安定な足場を1歩1歩ゆっくりと進み、洞窟の中へと入っていきます。
洞窟内は幻想的な青い光に包まれており、灯りなしでもかろうじて中を見渡せるようになっていました。しかし入ってすぐのところに25フィート四方の部屋があるだけで、中はすぐ行き止まりになっていました。ここでレオンが<捜索>判定。脇の水場がトンネルのようになっており、潜っていけばどこか別の場所に出られるということが判明。さっそくイリードが購入しておいたウォーター・ブリージングの巻物から呪文を発動し、潜っていくことに。
海中トンネルを歩いて行くと、トンネルの南側が海に繋がっているのが見えました。海水はそこから流れてくるのかー…なんて思っていたら、その穴からサフアグンが現れ、一向に襲い掛かってきました。
初めての水中戦、ディザーカの武器が斬撃武器なのでダメージ半減されてしまいますが、レオンのレイピアは幸運にも刺突武器。ただし攻撃力自体は低いので、急所攻撃を発動させていく必要があります。ディザーカがサポートに徹し、レオンと2人で1匹ずつサフアグンを処理していきました。また、イリードはマジック・ミサイルのワンドを振り回して確実にダメージを叩き出していきます。途中、サフアグンに囲まれて肝を冷やした場面もありましたが、アリシュアのカットとサポートもあって命の危機には至りませんでした。その数ラウンド後にPC側が勝利。今後また水中戦があった時のことを考えて、ディザーカがサフアグンの持っていたトライデントを数本入手していくことに。
トンネルを東へと進んで行くと、30フィート四方の開けた空間に繋がっていました。西端の部屋と微妙に似ていましたが、東側の壁面には頑丈そうな石の扉がありました。扉は中央を軸に回転していく仕組みになっており、1人ずつしか通れませんでした。PL達が過剰に怯えていましたが、特に罠などはありませんでした。
扉 → 廊下 → また扉という流れで進んで行き、北側に歩を進めた一行は、西と北に通路が延びている30フィート四方の部屋に出ました。室内には無数の骸骨が転がっており、大勢の冒険者達がこの部屋で命を落としたことが窺い知れます。
レオンに慎重に室内を<捜索>させようと思ったら、北側の通路から波の音に似た轟音が近づいてきました。轟音と共に現れた渦巻く波の塊は、部屋に流れ込んだ途端に天井めがけて渦となって巻き上がっていき、そのまま滝のように真下に打ち下ろされました。するとそこには、身の丈16フィートはあるであろう、大型サイズのウォーター・エレメンタルが立っていました。
ダメージ減少に阻まれてなかなか効率的にダメージを与えられないディザーカとレオン。そして相手は、足場が地面なので攻撃とダメージに−4の修正が入っているにもかかわらず出目がよくてブンブン。ただし1体だけということもあり、アリシュアの回復が余裕で間に合う展開。そのまま囲ってボコって次の部屋へ。
北の通路を進んだ一行は、行き止まりの手前で奇妙な装置を目にしました。壁の手前に胸の高さぐらいまでの大きさの正八角柱の台座があり、台座の上には何か大型生物の牙のようなもので固定された金属製の箱が安置されています。台座の側面には、「72.51.72」と書かれていました。
五十音で照らし合わせて「みなみ」と判断した一行は、台座を南に向けました。すると箱の蓋が開き、中に入っていた鍵のような小物を1つ入手。そのまま引き返して西の方へ進むことに。
廊下には落とし穴が仕掛けてあったんですが、今回もレオンが落とし穴を発見することはできず、自分だけきっちりセーヴに成功し、ディザーカを奈落の底に叩き落してくれました。イリードが持って来ていたジャンプの巻物を使って、<跳躍>が苦手なアリシュアも穴の向こうへと渡り、進んでいきます。
悪魔像4体が配置された怪しい部屋も、最初からガーゴイルと決め付けて1匹ずつ部屋の入り口から攻撃。業を煮やしたガーゴイル達が一斉に襲い掛かってきましたが、反対にディザーカにボコボコにされて粉砕されました。
北西の方角に進んでいくと、やや低い位置に作られた部屋に出ました。部屋の床は膝下ぐらいまで水が張られており、何やら嫌な予感が…そして現れるウォーター・エレメンタル。2体の中型エレメンタルが、渦潮に変化してレオンを巻き込みながら部屋中を移動しまくります。「水の体得」能力も相まって結構ピンチに陥りますが、hpも低く、ダメージ減少もないこいつらがディザーカ相手に粘れるワケもなく、結局レオンばかりが狙われただけで戦闘は終了。
その後はゼラチナス・キューブを見つけられないまま直進して取り込まれたり、偽装された落とし穴を起動させてまたもや自分だけ回避してみたりと、ヒーロープレイ連発のレオン。塩水で全身びしょびしょになってしまったイリードのフラストレーションが限界値を超えて開放されますが、「宝はもう目の前だ!」と主張して先に進むように促し、ノーペナルティで事なきを得ます。しかしその後、2秒で毒矢の罠を発動させてしまい、さすがにお説教タイムに突入。石畳の床の上に正座させてダンジョンアタックの危険性について小一時間ほど話し込んでやりました。
そんなバカなやりとりをしながらも一歩一歩奥へと進んで行く一行。すると、入り口にあったものと同じ石の扉を発見、もうすぐダンジョンの最奥部であることが想像できます。<捜索>を済ませて1人ずつ入っていくと、小さな部屋に下り階段が1つ…当然階段の下は海と繋がっているらしく、海水でいっぱいです。
再びウォーター・ブリージングの巻物を使用し、海中へと潜っていく一行。ゆっくりと進んで行くと、階段の下は40フィート四方の大部屋になっていました。東側の壁に大穴が空いていたのですが、そこから超大型のオルカが勢いよく飛び込んできました。
即座に戦闘開始。本日二度目の水中戦、サフアグンから奪い取ってきたトライデントが役に立ちました。ディザーカとレオンが前衛を引き受け、敵の巨体が後衛まで行かぬようにスペースを詰めながら接敵。イリードはマジック・ミサイルで援護をし、アリシュアは大ダメージを受け続ける前衛の回復に務めました。圧倒的に手数が足りず、オルカは4ラウンドで沈みました。別のオルカとか巨大なイカとかが来ないうちに、さっさと先に進むことに。
階段を上って海面から出た一行を待ち受けていたのは、巨大な扉と1つの仕掛け。鍵穴のような小さな穴の横に、「今宵、汝が目にする月を描け。」と書かれたプレートが備え付けられていました。
今宵は新月なので、月はほぼ見えません。相談した結果、入り口付近で入手した棒を穴に差し込み、回さずにそのまま手を離してみることに。数秒後、ガタンという大きな音と共に、目の前の扉に掛かっていた鍵は外れました。
こうして財宝の間に辿り着いた一行。石の壁が開かれると共に、部屋の中から眩い光が溢れ出して来ます。宝石や金貨など、合わせて2万gpにはなろうかというぐらいの量です。全員でガサガサと詰め込み、ウォーター・ブリージングの魔法が切れないうちに一気に引き返すことに。
こうして今回の冒険は終了。街に戻り、酒場で財宝の分配を行うことに。
イリード 「まさか本当に財宝が残っているなんて思わなかったわ。」
アリシュア 「そうですね。」
レオン 「おい…おい…ディザーカ。」
ディザーカ 「ん? どうしたんだレオン。」
レオン 「地図買う時に借りた金だ。返す。」
ディザーカ 「ああ、そういえば貸してたっけ! すっかり忘れてたよ! あはははは!」
レオン 「バカ! 声がでけぇよ!」
全員 「………………………。」
アリシュア 「レオンさん…借金はよくないですよ?」
レオン 「あ、いや、これは…その…」
イリード 「あんた無職じゃない。なんで返すあてもないのに、生意気に金貨300枚も借りてんのよ。」
レオン 「んだとぉ! その借金のおかげでこんだけのお宝が手には……」
アリシュア 「はい?」
レオン 「あっ! やべっ!」
イリード 「…そういえば…あの宝の地図、どうこでどうやって手に入れたのかまだ聞いてなかったわね。」
レオン 「うっ…それは…」
ディザーカ 「レオンが乞食のじーさんから買ったんだよな!」
レオン 「おい、バカ!」
全員 「………………………。」
レオン 「違うんスよ! 俺はあのじーさんに飯を奢ってやっただけで、地図はそのお礼にって…」
イリード 「たかが食事代で、どうしてそんな大金が必要なのよ?」
アリシュア 「ウソはよくないですよ、レオンさん。」
レオン 「いや、その、あのじーさん、金がないからこの地図を買ってくれって! で、俺、人助けのつもりで!」
アリシュア 「レオンさん、そういう時は無償で手を差し伸べてあげるべきでしょう?」
レオン 「うっ…」
イリード 「どうせ欲に目が眩んだんでしょ? で…いくらで買ったの?」
レオン 「いくらって…お前…」
イリード 「いくらで買ったのか聞いてるの。」
レオン 「…き、金貨50枚で…」
イリード 「正直に言いなさい。」
レオン 「すいません! 金貨500枚です!」
イリード 「ご…高ッ!! バッカじゃないの!?」
レオン 「なんだよー!! ウソはよくないって言うから正直に喋ったのにー!!」
アリシュア 「そういう問題じゃありません!!」
ディザーカ 「で、俺が300枚貸してやってたんだよな、レオン。」
アリシュア 「そもそもどうしてディザーカさんの方がたくさん払ってるんですか!!」
レオン 「お前はもう喋るなー!!」
イリード 「それであたし達を巻き込んでおいて、宝がなかったらどうするつもりだったのよ!?」
レオン 「いいだろ別に! ちゃんと宝は残ってたんだから!」
イリード 「開き直ってんじゃないわよバカニート!!」
レオン 「イテェ! バカ、金貨詰まった袋で殴るな!」
アリシュア 「レオンさん!! 私の話はまだ終わってませんよ!!」
ディザーカ 「…あれ? どうしてみんなケンカしてるんだ?」