第03話  来訪者の巣窟




食糧難パーティは森で野営をしながら今後の方針について考えていました。考えていたら…ダイスロールでボコい目が出ていきなりエンカウント。敵はクレンシャーが1体。クレンシャーとは、猫科の大型肉食獣のような姿をしたモンスターで、この森で出現するモンスターの中では割とマトモなやつです。なんてったってアンデッドじゃありませんから。






あれ? こいつ食えるんじゃね?





気が狂ったパーティに1ラウンドで殺されたクレンシャーは、皮を剥がれ、みるみるさばかれ、肉塊と化しました。お肉が15ポンド手に入ったことで、危機的状況から見事に脱出。なんかこんなことで大喜びしているこいつらが異常に思えますね。

その後、木々を拾っては肉を焼き、腐ったらピュアリファイ・フード・アンド・ウォータ−でキレイにして、3日ぐらい歩き続けた結果…ついに森を抜けることに成功しました。あとは湿地が50マイル。1日20マイル進めるので、このままあと3日程で港町に着ける算段です。

旅は順調に進み、肉が尽きたところでちょうど残り1日ぐらいの距離。保存食が4食分残っているので、もう安泰。飲み水はレイムがクリエイト・ウォーターで作っていたので、飲食共に完璧。こうして一行は無事に港町に着くことができました。到着後はソッコーで宿を取り、食事&入浴&就寝。久しぶりのベッドを満喫し、全員ぐっすりと眠りました。PCだけじゃなく、PLもホッとしました。





翌日、道中でオークやら何やらを倒した時に手に入れた宝物を売り払い、金貨にしてからみんなで平等に分配。それから全員の旅の目的などを確認し合いました。






ルイン 「皆はこれからどこに向かうんだ?」


ミュー 「……決めてない…」


レイム 「アタイも実は決まってないんだよね。」


ルイン 「なんだ、当てがないのは私だけではなかったのか…」


ミュー 「…なら…もうちょっと一緒にいよう…」


レイム 「…そうね。ここでお別れってのも寂しいしね。」






全員当てのない旅なので、もうしばらく3人で旅を続けることにしました。極限状態のウィルダネスで、自分という存在の無力さと、仲間という存在の心強さを再認識したPC達は、こうしてパーティを結成し、より強く絆を結びました。





早速乗船の手続きをしに港に行きました。どこに行くかは決まっていないけれど、とりあえず冒険者などの流れ者が多く行きつく場所を船乗りさんに教えてもらおうという魂胆です。船着場で話を聞いてみると…なんとこの町の港からは貨物船しか出ていないとのこと…何とかならないのかとしつこく聞いてみたところ、ギルドのメンバーで、この町の貿易などを仕切っている男がいるので、そいつに会って直接交渉してくれと言われました。早速紹介してもらい、交渉しに行くことを決意します。

港を牛耳っている男の名はルイーズ。相談してみると、何とも慣れた感じで応対してくれました。






ルイーズ 「船に乗りたいだぁ? ああ、いいぜ。乗せてやるよ。」






この町に流れ着いて、他の大陸に渡りたいと言ってくる冒険者は結構多いらしく、ルイーズはそういう冒険者達を貨物船に乗せてやる代わりに、仕事を1つ依頼しているようです。今回も、ルイーズの依頼を1つこなしたら、船にタダで乗せてくれるとのこと。






ルイン 「…で? 我々は何をすればいいんだ?」


ルイーズ 「最近、この町の下水道で妙な生き物が多数目撃されている。」


レイム 「妙な生き物? モンスターなの?」


ルイーズ 「わからん。そこでお前さん達には、この件の調査と…もし本当に化け物がいるようなら退治も頼みたい。できるか?」


ミュー 「…大丈夫…任せて…」


ルイーズ 「そうか。町の住民達に被害が及ぶ前に、何とか解決してくれ。」






ルイーズの依頼は、この町の下水道で目撃された謎の生物の調査でした。この調査を済ませれば、PC達はタダで船に乗せてもらえます。みんなで話し合った結果、目的地は『グレイホーク・ワールドガイド』に載っている大都市、グラドサルに決定。グラドサル行きの船は明日到着し、2日間荷物の積み込み作業を行った後、その翌日に出発するとのこと。つまり、あと4日以内に依頼を解決しなければなりません。まぁ、期限が過ぎたら別の船に乗ればいいだけですが、せっかく決めた目標なんで、何とか4日以内に解決する方向で話をまとめました。

町で買い物をして準備を整えてから、いよいよ下水道に突入です。中央の横幅10フィートの溝を汚水が流れ、その両脇に5フィート幅の歩道が延びていました。おそらく下水道なんだから罠なんてないだろうということで、ミューではなくルインが先頭を歩くことになりました。歩道をゆっくり歩いて行くと、いきなり巨大なクモの巣に引っ掛かり、そのまま奇襲を受けました。基本的に敵と接触できるマスが1箇所しかないので、ルインとクモのタイマンでした。なかなか攻撃が当てられず、時間こそかかりましたが、特に大したダメージは負わずに済みました。レイムが手早く回復を済ませ、一行はそのまま奥へと進みます。





奥に進むと、今度は巨大な植物が道を埋め尽くしていました。レイムの<知識:自然>の判定の結果、アサシン・ヴァインという凶悪な肉食植物だということが判明しました。ものすごい攻撃ボーナスと筋力を持っており、叩きつけ→絡みつき→締め付けの極悪コンボで一気にルインが瀕死に! その後の組み付き対抗判定で敵がヘボい目を出してくれたおかげで、何とか組み付きから逃げ出すことができました…が、HPが危険だったので、一時撤退。なんか5フィートずつしか接近できないようなので、急いで回復を済ませた後に作戦を立て、即座に実行。アルとミューが対岸に回り込み、ルインと挟撃の姿勢を作ることで戦闘を有利に進めようという考え。さぁ、第2ラウンドのスタートです。

アルが移動の際に誘発させてしまった機会攻撃で瀕死寸前まで痛めつけられましたが、DMの出目がここから急激に悪化し、アルの噛み付き→足払いでアサシン・ヴァインがなんと転倒。すかさずルインが刀を振り下ろし、苦戦の末に何とか撃破。間違いなく、このパーティが今までエンカウントしたモンスターの中で最強の敵でした。

この戦闘でレイムの回復魔法が切れたので、一度引き返して就寝。翌日、それぞれの財産とは別に貯蓄しておいたパーティ資金をほぼ全額使って、キュア・ライト・ウーンズのワンドを購入しました。これでライフラインがだいぶ太くなりました。補給を終えた一行は、勢いにのって一気に下水道を探索しました。ウォーター・エレメンタルやソックア、ヘルハウンドなど…下水道付近で目撃された正体不明のモンスター達は、他の次元界から呼び出されたモンスター達でした。アサシン・ヴァインも来訪者ではないものの、本来下水道に生えるような植物ではありませんし…どうやら一連の事件は何か人為的なものが働いているようです。





下水道最後の敵はヴァルグイユ。形容しがたい醜悪なモンスターでした。金切り声で麻痺させて、行動不能になったキャラクターに接吻。相手をヴァルグイユにしてしまうという恐ろしい能力を持っています。金切り声も接吻も頑健セーヴで対処するんですが、なぜか頑健セーヴが1番高いルインが、どちらもファンブル…撃破後に慌てて引き返しました。日光に当たると進行は止まるらしいんですが、そんなことPC達が知るわけもありません。教会に行ってリムーヴ・ディジーズをかけてもらって、再び下水道に突入しました。





下水道の奥に進むと、いきなり構造が変化…民家に突入しました。階段を発見したので、上ってドアを開けると…1人の気弱そうな男が立っていました。この男が来訪者達を呼び出した張本人でした。彼は他次元界のモンスターと、こちらの世界のモンスターの生態について研究をしていたのですが、お金が足りず、町に許可を取ることも研究施設を建てることもできず、下水道で勝手にモンスターを飼っていたようです。






レイム 「ちょっとアンタ! 自分の都合で呼び出しておいて、世話もロクにしないで放っておくなんてどういうつもり!?」


男 「え? は?」


レイム 「かわいそうだと思わないの!? 最後までキチンと責任持ちなさいよ!! それが飼い主の義務ってものでしょう!?」


ルイン 「……いや…あの……レイム殿……責めるべき点はそこじゃないんだが…






いくら下水道とはいえ、町中でモンスターの研究なんてされては、何も知らない住民が怯えるのは当たり前です。住民に迷惑がかかっていることを説明した上で説得した結果、彼はこちらの言いたいことを理解してくれました。今からすぐに出頭して自首してくれるとのこと。こうして依頼はクリア。ギルドから謝礼ももらえて懐も温まり、さらにレベルもアップ! 完璧な結果を残すことができました。





こうして、冒険の舞台はいよいよオアリクの最東端、フラネスへと移ります。最初の目的地はキーオランド王国のグラドサル。人口が5万人ちかくある大都市です。ルイーズの手引きのもと、貨物船への乗船を許可された一行は、海路でグラドサルを目指します。その途中、海の上でモンスターに襲われるなどと…この段階で考えている者は誰もいませんでした。






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