第09話  数多の腹心  後編




ミューとアルが手前のハウラーに挟撃を仕掛けた後、続くレイムが敵全員を効果範囲内に捉えてアイス・ストーム投射! 発生した雹の嵐が敵のHPをゴッソリと奪い取っていきます。重傷を負ったシュリエックは宿屋の外に出てフライの呪文を発動。PC達の近接攻撃が届かない空へと退避します。

ルインミューとアルは、レイムの手番で雹が止むまで待機を宣言。そしてレイムの手番…アイス・ストームの効果が終了した瞬間、即座にコール・ライトニングを投射! 天より降り注ぐ雷が負傷した敵全員に容赦なく襲い掛かります。しかし、悪運の強いシュリエックは反応セーヴに成功し、一命を取り留めます。

ハウラーAが雷に打たれて死亡したので、生き残ったBに対して、今まで待機していた2人と1匹が同時に攻撃をしかけますが、何故か全員ハズレ。この攻撃で宿屋の入り口に立ってしまったルインに、シュリエックがスコーチング・レイを投射。灼熱の光線が2本とも命中し、HPの半分ちかくを一気に削り取られてしまいます。

次のラウンド、ミューとアルがハウラーBを撃破し、ルインは下がってレイムから回復魔法をかけてもらいます。するとシュリエックがサモン・モンスターでハウラーを再び召喚。そして出現したハウラーがアルめがけて襲い掛かってきます。攻撃を受けてしまい、針を4本も刺されてしまいます。しかしそれでも挟撃要因にはなります。行動を遅延させていたミューとアルがハウラーに攻撃…したのですが、ファンブルで攻撃失敗。反撃で再びアルに針が4本刺さり、全判定に−8の異常事態に突入! ニードルまみれのアルが別の生き物に見えてきて仕方ありません。

一方その頃、ルインレイムからスリングを受け取り、シュリエックを撃つための準備を整えます。そのシュリエックは、ハウラー召喚後にサモン・スウォームでバット・スウォーム(コウモリの大群)を呼び寄せ、宿の中に向かわせます。コウモリの大群がルインレイムに襲い掛かってきました。

ルインの手番、スウォームの煩わす能力に対するセーヴに成功し、宿の窓に向かってダッシュ。<跳躍>判定に成功して窓を突き破って外に出ると、着地した後にスリングを発射。流れるような動作だったのにダメージは1点…1d4じゃしょうがないか…

ミューとアルはハウラーを囲んで戦闘を続けますが…ファンブルが続発してダメージが与えられません。そしてシュリエックの手番…眼下のルインを対象にホールド・パースンを投射。難易度17の意志セーヴに失敗したルインは麻痺状態になってしまいます。室内の戦闘は徐々にPC側が盛り返し、有利になっていくのですが…屋外の方はまさに絶体絶命。麻痺しているルインにスコーチング・レイが問答無用でヒットし、HPの半分以上を持っていかれてしまいます。

室内の方は、ミューが急所攻撃でハウラーCを沈めて、レイムがフレイミング・スフィアーを操ってバット・スウォームを攻撃します。そして屋外…再びセーヴのチャンスをもらったルインでしたが、またもや失敗。そしてシュリエックの番…何故かホールド・パースンの呪文が解除されます。






ルイン 「……!? …何故術を解いた。断末魔を聞くためか?」


シュリエック 「それもあるけど…殺す前に石の在り処を聞いておこうと思ってね。」


ルイン 「……………………。」


シュリエック 「アンタ達が持ってるの? それとも、昨日のうちにどこかに隠した? さぁ、教えなさい。」


ルイン 「…言わねば殺す…ということか…」


シュリエック 「もちろん。ホラ、さっさとしなさい。」


ルイン 「……断る。」


シュリエック 「何ですって?」


ルイン 「私をみくびるな。何故お前があの石を求めているのかは知らんが…」


シュリエック 「…………………………。」


ルイン 「どうせよからぬことを企んでいるのだろう。そんなやつには絶対に渡さん。」


シュリエック 「あらそう…じゃあいいわ。アンタを殺した後で他のやつらに聞くから。」


ルイン 「ふっ…結果は同じだ。お前のような外道に屈して口を割る者など、我らの中には一人もいない!」


シュリエック 「……っ!! だったら全員ブッ殺した後でゆっくりと探すまでよっ!!」






激怒したシュリエックのスコーチング・レイが、容赦なくルインを襲います。2本とも命中し、いよいよ最後か…と思ったら、DMのダメージロールが死ぬほど低くて、何とか残りHP一桁で踏みとどまりました。最後の力を振り絞って室内に戻り、レイムに治癒呪文で体力を回復してもらいます。

その後、レイムがバット・スウォームを最後の攻撃魔法で撃破すると、シュリエックも手持ちの魔法が尽きてしまったらしく、ディメンジョン・ドアで撤退していきました。こうして…長い戦いが幕を閉じました。こちら側としては、あんな恐ろしいやつを生かしておくと後々苦労するのは目に見えているのですが…こうも消耗させられては、贅沢言ってられません。むしろ、生き残っただけでも儲けもんです。

さて…この戦闘でレイムの呪文が、筋力強化のブルズ・ストレングス2発のみとなってしまいました。まだ太陽は昇ったばかり…なのにパーティは絶望のドン底です。





とりあえずライフラインを確保するために、全員のお金をかき集めてキュア・モデレット・ウーンズのワンドを購入。即座にHPを回復させて全員を全快状態に戻します。その後、情報収集を開始。

敵の名前や行動、目的などをキーワードにして聞き込みをしていくと、今回の襲撃の裏には大きな組織が絡んでいるのではないかという情報が手に入りました。組織の名前や規模は不明ですが、その組織が石を欲しがっているということは間違いありません。さらに、情報を集めると、シュリエックがその組織の構成員であるという線が濃厚になってきました。同時にパーティ内では、スクイルとイグルアは、シュリエックに金で雇われて動いているだけなのではないかという推測が立ちました。

先ほどの戦闘で消耗しきってしまった一行に、次の襲撃に耐えられるほどの戦力は残されていません。そこで彼女達は、和解の可能性が一番高いイグルアに接触を試みることにしました。





庭で掃除をしているメイドを捕まえ、「貴公が探している石のことで話がしたい。我々はその石を所持する者だ。」と伝えてもらいました。しばらくすると許可が下りたらしく、応接間に通されました。

イグルアは、毛皮でできたローブに身を包んだデブのオッサンで、葉巻を吸いながら一行が来るのを待っていました。到着するなり、さっそく交渉。どうやらイグルアは、石について詳しいことは一切聞かされておらず、彼女達の読み通り、ただ組織に利用されているだけのようでした。石についての情報など、現在所持している情報をすべて伝えて協力を求めると、快く承諾してくれました。

こうして、何もかもがうまくいったかのように見えたのですが…突然DMが<忍び足>の判定を宣言。即座に<聞き耳>で対抗する一行。ミューが対決に勝利したので、結果を聞くと…イグルアの背後に何者かが潜んでいるという答えが返ってきました。






ミュー 「伏せて!」


イグルア 「ひ、ヒィ!!」






慌てて伏せたイグルアの頭上で、鋭利な刃物が空を切る。同時に、インビジビリティの効果が切れ、スクイルが姿を現す。
(インビジビリティは、攻撃を行った時に自動的に効果が切れてしまう。)






スクイル 「チッ…しくじったか…」


レイム 「アンタは…昨日の!」


ルイン 「何故、イグルア殿を殺そうとする! お前達は仲間だったはずだろう!?」


スクイル 「いやなに、今の話はこのお貴族様には知られちゃまずかったってことさ。それに…石の在り処もわかった今、コイツは用済みだしな。」





不敵な笑みを浮かべるスクイルに対して身構える一行。






ルイン 「イグルア殿、我々は屋敷に忍び込んだ賊から貴公を守るために応戦する!! よろしいな!?」


イグルア 「も、もちろんだ!! 助けてくれ!!」


スクイル 「いや、オレには戦う気はねぇよ。お前らの相手は…シュリエックから借りてきたコイツらだ!」



グレーター・テレポートで、突然スクイルの両脇にビアデッド・デヴィルが現れました。両手足から伸びる鋭い爪、1本の長い尻尾、そして蛇のようにのたうつあご髭…別の次元界から召喚された、正真正銘のバケモノです。鋭い目つきで一行を睨みつけ、鋸刃のグレイブを構えます。



ルイン 「なるほど…今日も逃げるというワケか…情けないやつだな。」


スクイル 「………チッ!! 昨日の傷が残っちゃいるが、そこまで言うなら相手してやるよ!!」







冗 談 だ っ た の に …




ルインの失言で、予定よりもキツい戦闘が開始されました。イニシアチブで大敗し、敵全員が最初に動くという圧倒的不利な状態からスタート。

スクイルのマジック・ミサイルがルインに突き刺さり、ビアデッド・デヴィルは2体とも怒りの狂乱を宣言し、グレイブで攻撃してきます。アルとルインが一撃ずつもらい、地獄の流血という状態異常を受けてしまいます。

地獄の流血とは…毎ラウンド、自分の行動時に出血によって2点のダメージを受けてしまうバッドステータスです。一度回復してしまえば傷口は塞がりますが…この傷を癒すには、治療判定をするか、回復魔法をかけた術者が対抗判定で一定以上の数値を出さなければいけません。もしその判定に失敗してしまえば…傷は塞がらず、出血も止まりません。

そんな厄介な状態異常を1ラウンド目に受けてしまい、絶望的な状態。レイムはブルズ・ストレングスをルインにかけた後、キュア・モデレット・ウーンズのワンドでビアデッド・デヴィルA&スクイルのマジック・ミサイルの集中攻撃を喰らうルインを必死に回復させます。そのルインはビアデッド・デヴィルAを撃破するために攻撃を集中させます。スクイルはうっとおしいけれど、相手にしてると目の前のビアデッド・デヴィルに殺されかねないんで、相変わらず無視の方向で。

一方ミューは、アルと連携してビアデッド・デヴィルBを攻撃しますが、出目が振るわず、効果的なダメージを与えることができません。そんなこちら側を嘲笑うかのように、ビアデッド・デヴィルBはアルに攻撃を集中させます。みるみるうちにアルのHPが削られていき、ついにとどめの一撃が繰り出される…誰もがそう思ったその時、予想外の事態が…!








部屋の隅で震えていたイグルアを襲う無情なる一撃…




致命の一撃を受け、イグルアは物言わぬ屍と化しました…守れなかった…湧き上がる怒りが彼女達の闘争心に火をつけ、反撃の狼煙を上げます。





レイムのサポートのおかげで、敵2体の強力な集中攻撃に耐えきったルインがビアデッド・デヴィルAを撃破! そこにできたスペースを、ミューがアルと共に駆け抜け、スクイルに襲い掛かります! ただでさえ、昨日の戦いで削られていたスクイルのHPが一気に削られていきます。そして気がつくと、スクイルとルインが一直線に並んでいる…迷わず突撃を宣言。






ルイン 「はぁぁぁぁぁっ!!」


スクイル 「くっ…しまったッ!! ぐああぁぁぁぁぁっ!!」






渾身の力を込めて振り下ろした刃が、スクイルの身体を斬り裂きました。この一撃により、スクイルは絶命。残るはビアデッド・デヴィルBのみ。

1体とはいえ強敵…激しい抵抗により、アルが気絶までさせられてしまいますが、残りの力をすべて出し切り、辛くも勝利を収めました。全員が30点以上のダメージを負った状態での勝利…今までで最大の激戦でした。

ここで、騒ぎを聞きつけたメイドが部屋に飛び込んできます。事情を説明し、急いで司祭を呼んでくるように頼みました…が、数十秒後に彼女の悲鳴が…次いで、この部屋へと近づく足音が聞こえてきました。






カツ……コツ……カツ……コツ……




ミュー 「……来る…!」


ルイン 「レイム殿、回復を! 早く!」


レイム 「わかってるっ!」



しかし…全員の回復が完了する間もなく…開け放たれた扉の向こうに、仮面の魔道師、シュリエックが現れました。その右手には…さきほど司祭を呼びに行ったメイドの首がぶら下がっていました…



シュリエック 「あら…スクイルちゃん、やられちゃったんだ。それじゃあ、アタシがやるしかないみたいねぇ。」


ルイン 「ここで終わらせる…やるぞ!」


レイム 「そうね、コイツを許すわけにはいかないからね!」


ミュー 「…苦しいけど…がんばる…」


シュリエック 「なぁんてね♪」



一行をからかうような声でそう言うと、シュリエックは指を鳴らします。シュリエックの影から…ハウラー、ヘルハウンド、フィーンディッシュ・モンストラス・スコーピオンの3体が湧いて出てきました。



シュリエック 「アンタ達の相手はこの子達。ここから生きて出られたら、そのうち相手をしてあげるわ。じゃあね。」






そのままディメンジョン・ドアで消えるシュリエック…同時に、残されたモンスター達が一斉に彼女達に襲い掛かってきます。

イニシアチブはハウラー → アル → レイム → ミュー → ルイン → ヘルハウンド → スコーピオンの順。最後の戦いの開始です!

ハウラーが、一番近くにいたルインに襲い掛かりますが、攻撃ははずれ。アルはHPの回復がほとんどできていなかったため、部屋の奥に避難。そしてレイムルインにワンドで回復をかけます。ミューは行動を遅延させ、ルインはハウラーに反撃。全力攻撃を2発ともしっかり当て、一瞬でハウラーを撃破します。

ハウラーが死んで出口が空いたので、ミューが部屋の外に飛び出してそのままヘルハウンドに攻撃…するがファンブル。ヘルハウンドが反撃で炎を吐き、ミューがセーヴに失敗…しかし、DMの出目が悪く、ダメージは大したことなし。

そして事件発生。3体の中で一番格下だったはずのスコーピオンの出目が狂って、ミューが組み付かれてしまいます。一瞬でくたばったハウラーをブチ抜いて株価急上昇。しかし、その後は大した抵抗も見せず、2ラウンド後にPC達が勝利を収めます。





戦闘終了と同時に、騒ぎを聞きつけた警備兵が屋敷に突入してきました。彼女達以外に生存者はいなかったらしく、数時間の事情聴取を受けることになります。

事情を話し、シュリエックを指名手配してもらいますが…この程度で捕まるようなヤツではないでしょうし、そもそももうこの町にはいないでしょう。





こうしてグリラックスでの事件は幕を閉じました。彼女達にとっては苦い終わり方となってしまいましたが…ここで足を止めるわけにはいきません。仕度を整え、次の町を目指して出発することにしました。





彼女達の本当の旅が、ようやく幕を開けたのでした。






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