第14話  女王の地下迷宮  全編




前回…ニオル・ドラでグレンと再会した一行は、4人で力を合わせて邪悪な精霊を打ち倒し、2つ目の輝石である「正邪の石」を手に入れました。

同時に残る2つの輝石の手がかりも手に入れたのですが、あまりにも漠然としすぎており、残念ながら一行を具体的に行動させるような原動力にはなりませんでした。…ということで、ここはあえてグレイホークを目指して先へ進むことに。

ニオル・ドラを出発した一行はシェルドマー川沿いに北上し、グラン・マーチへと入国し、シボレスで物資の購入と休息を取ることに。シボレスは小さいながらも都市(町より大きい)として栄えており、グラン・マーチ内で2番目に人口が多いところです。





ミューが行った<情報収集>の結果、一行が到着する5日程前、シボレス付近の森林の奥で古い地下遺跡が発見されたという情報を入手しました。前回、輝石の番人から「輝石の1つは天に浮かぶ城に封印されており、そこに行くための遺跡がどこかにある。」という情報を手に入れてますので、"遺跡"と聞いては黙ってはいられません。そこでさらに詳しく情報を集めると、探索に行った冒険者の中で、唯一生きて帰ってこれた人がまだ町にいるということもわかりました。早速会いに行って詳しい話を聞くことに。

話を聞いてみると、その遺跡は地下に広がる巨大な図書館で、古の知識や記録が記された本が山のように眠っていたのだとか。しかし山のようにあったのは本だけではなかったようです。今まで見たことも聞いたこともない奇妙なモンスターが、調査のために足を踏み入れた冒険者達に容赦なく襲い掛かってきたそうです。かなり手強いモンスターだったらしく、生き残りは、今一行にこの情報を与えてくれている目の前の男ただ一人…

手に入った情報はこの程度で、ぶっちゃけとっても危ないよ☆ってことぐらいしかわかりませんでした。これ以上の情報は手に入らなさそうだったので、誰かに先を越される前にさっさと乗り込んでしまうことに。最後に遺跡の詳しい場所だけ聞き、一行は支度を整えて遺跡に向かいました。





遺跡の入り口はとても小さく、入り口を潜るとすぐに地下へと続く階段がありました。光源を準備し、先頭に立ったミューが<捜索>をしながら慎重に進んでいきます。

かなり深くまで降りて行き、ようやく階段は終わりました。辿り着いた場所は、天井30フィート程の高さはある巨大な本棚が、壁に沿ってズラッと並んだ広大な地下図書館でした。どの本棚にも見慣れない文字で書かれた本がギッシリ詰まっており、ここにある本全てを読破するのに一生を費やしてしまうのではないかと疑ってしまうほどでした。

一行が予想外のスケールのデカさに呆気に取られていると、ミューが<視認>判定で敵影を発見! 本棚を伝って見たこともない奇妙なモンスターが強襲してきました。





敵はマジック・ザ・ギャザリングでは有名な種族、スリヴァーです。それぞれが同種のモンスターを強化する能力を持っているので、多数のスリヴァーが同時に現れると大惨事になります。

今回現れたのは、板金スリヴァー1体と金属スリヴァーが2体です。板金スリヴァーの特殊能力は、半径40フィート以内の他のスリヴァーのACを+2します。金属スリヴァーは強化能力を持っていないのですが、他のスリヴァーの能力の影響を受けることができます。あと人造の種別特徴を持ってます。急所攻撃、クリティカルを無効化するこの能力が地味にイヤらしい。

1体だけ姿が違う板金スリヴァーに狙いを定め、ルインミューがイニシアチブカウントを揃えて襲撃。それぞれが《一撃離脱》と<軽業>を駆使して金属スリヴァー達の合間を縫い、追い討ちを含めた3発で瞬殺を狙います…が、hpもACも高く、先手必勝とまではいきませんでした。しかし敵の攻撃も軒並み外れ、次のラウンドの集中攻撃で板金スリヴァーはあっさり死亡。ルインは残った全力攻撃を横にいた金属スリヴァーに叩き込み、1匹撃破します。すると残った金属スリヴァーは奇声を上げて図書館の奥へと逃げていきました。

初戦は楽勝で終了しましたが、この段階でPC達は敵の能力を把握していないため、以後の戦闘はかなり苦戦の連続になります。





ミューが<捜索>をしながら進んで行くと、先程逃がした金属スリヴァーを発見。板金スリヴァーとあともう1体、初めて見るスリヴァーと一緒に再び襲い掛かってきました。

この初見のモンスターは水晶スリヴァー。半径40フィート以内にいる他のスリヴァーに呪文抵抗22を与える非常にファッキンなスリヴァーです。そんなことを一切知らないグレンは、得意気にスコーチング・レイを放ちますが、焦熱と化した魔力の塊は敵の目の前で雲散霧消してしまいます。

地のACが結構高いことから、板金スリヴァーが1体いるだけで結構当たらなくなります。おまけに次のラウンドには、半径40フィート以内にいる他のスリヴァーに「攻撃を命中させた時に1d6の追加ダメージを与え、それに等しい値の一時的hpを得る。」という、生命力吸収の能力を付与する吸血スリヴァーが、板金スリヴァーと水晶スリヴァーをさらに1体ずつ連れて来て戦場は超混沌化。グレンが根性で呪文抵抗をブチ抜いてファイアー・ボールを叩き込み、手負いとなったスリヴァー達をルインミューが1匹ずつ潰していきました。レイムが治癒の呪文で戦線を支え、アルも追加攻撃の足払いを駆使して貢献します。

決着は敵の増援から5ラウンド後でした。PC達はボロボロでしたが、ワンドで回復を済ませ、リソースを確認した後、再び奥へと進んで行きました。





1階の一番奥の本棚でミューの<捜索>が出目20を叩き出し、隠し扉を発見! 慎重に進んで行くと、その先には台座に安置された水晶球のようなものがありました。一瞬輝石かと思いましたが、輝石よりは明らかに大きい…

グレンがディテクト・マジックをかけてみたところ反応アリ。次いでアイデンティファイを唱えると、この球自体が一種の記録媒体となっており、膨大な量のデータを保持しているのだとか。魔力を注ぐことで起動するらしいのですが、この図書館自体が強力な魔力を帯びた土地だったため、触るだけで操作できるとのこと。早速起動してみることに。










オーブ 「汝らの問いに答えよう。」


ルイン 「わっ、しゃ、しゃべったぞ!」


レイム 「アタイらは聞くだけでいいのかい。こりゃ楽だねぇ。」


グレン 「じゃあ早速。この施設は一体何なんですか?」


オーブ 「過去の遺産。」


レイム 「聞かれたことしか答えないのかい。じゃあ何のための施設なんだい?」


オーブ 「知識の蓄積のための施設。」


ルイン 「知識か…一体どんな知識を集めているんだ?」


オーブ 「様々な知識。」


グレン 「えーと、(目の前のオーブを指して)それじゃあ、あなたは何なんです?」


オーブ 「文化、伝承についての知識を記録したオーブ。」


ルイン 「その"おーぶ"とやらは全部でいくつあるんだ?」


オーブ 「24個。」


グレン 「外にいた生物はいったい何なんです?」


オーブ 「軍事物のデータはこのオーブには記録されていない。」


ミュー 「ミューも聞きたい。ここはいつ造られたものなの?」


オーブ 「ミリア歴143年。」


ルイン 「ミリア歴…誰か知っているか?」


グレン 「いえ、初めて聞きましたよ…」


レイム 「他の事を聞いた方がよさそうだね。地の獣って知ってるかい?」


オーブ 「そのようなデータは保持していない。」


レイム 「あらら。」


グレン 「文化や伝承について…じゃあ、巨大な獣と輝石にまつわる伝承は残っていないですか?」


オーブ 「過去、巨大な兵器とその動力源となった輝石が、古代生物との戦いに用いられている。」


グレン 「他にそういった話はありますか?」


オーブ 「その伝承より過去にも、そういう技術や伝承はあったと伝えられている。」


ルイン 「ん…じゃあその言い伝えが、直接関わりがあるとは言い切れないわけか。」


グレン 「先程聞いた伝承よりも過去の話で、何か残っているキーワードは?」


オーブ 「秩序と混沌の石。」


ルイン 「それも輝石か?」


グレン 「どうでしょう。輝石だとすれば、6つ目になりますからね。」


ミュー 「その石について詳しく聞かせて。」


オーブ 「その件に関してのデータは所持していない。」


ルイン 「所在は不明か。」


グレン 「実在したかも怪しいですね、ここまでくると。」


ミュー 「まだなにか聞く?」


グレン 「私はもう質問が思い浮かびません。」


レイム 「魔力で動かせるんだったら、アタイ達にも使えるね。便利そうだし、持って行こうか。」


グレン 「そうですね。サイズ的にもかさばりませんし。」










確信に迫るようなものはありませんでしたが、かなりの情報と便利なアイテムを入手しました。オーブをカバンに詰め込んで、一行は別の部屋の階段から階下へと降りて行きます。





階下には、増力スリヴァー(半径40フィート以内にいる他のスリヴァーの筋力に+4の強化ボーナスを与える大馬鹿野郎)などをはじめとしたステキな仲間達が、歓迎の準備を済ませて一行を待ち構えていました。吸血と増力が同時に奇襲を仕掛けてきた時は、ミューレイムが危うく殺されそうになるところまで追い込まれました。





そんな、結構ハードな遭遇をいくつかこなし、ついにこの図書館の最下層に辿り着いた一行。

最後の部屋は100フィート四方の大きな部屋でした。床には何か妙な紋様描かれており、図書館中の魔力がその紋様をなぞるように部屋の中央へ向けて流れていました。そして部屋の中央には…




















!?






なんかとんでもないのが待ち構えていました。このダンジョンのボスはスリヴァーの女王。名前の通り、全てのスリヴァー達を統べる、母なる存在です。

開幕一番でグレンがファイアー・ボールを放つも、呪文抵抗によって阻まれてしまいます。実は女王のすぐ側に水晶スリヴァーが<隠れ身>で潜んでいたのです。(水晶スリヴァー自体は抵抗を破られて火ダメージをたっぷりもらっていましたが…)

何にせよ、せっかくのチャンスを無傷で切り抜けられてしまいましたが、ルインが《一撃離脱》を宣言して難なく懐に潜り込み、攻撃を命中させます。しかし続く女王の手番…《回避》を宣言し忘れたルインに対して、悪夢の強打10点振りが炸裂! 《回避》さえしていれば、《捉え難き標的》で《強打》のダメージ・ボーナスを無効にできたのに…結局、嵐のような全力攻撃で、100以上あったルインのhpは6に。もうワケがわからない。

ミューも<軽業>で懐に潜り込み、急所攻撃を仕掛けますがまさかのファンブル…体勢を立て直すために、レイムはキュア・クリティカル・ウーンズを待機、アルはレイムのカバーに入ります。瀕死の水晶スリヴァーは、少し離れたところにいる怨敵グレンに殺到。グレンはダメージを負いながらも、目の前の水晶スリヴァーにスコーチング・レイを投射。これを撃破して、女王を守っていた呪文抵抗を打ち消します。

ルインは回復を受けるために《一撃離脱》を宣言し、攻撃を当ててから後衛へ。この攻撃がミューの追い討ちを誘発し、女王を苦しめます。しかし女王はルインが後衛に下がったところで、特殊能力を使用…なんと、子供を産みやがりました。板金スリヴァーが1体現れ、即座に行動してグレンに攻撃を仕掛けてきました。

ミューは回復したルインと連携を取るために、単身<軽業>で潜り込み、待機アクションを宣言。行動は攻撃、トリガーは"ルインが女王を攻撃したら"。グレンは5フィートステップで板金スリヴァーから離れ、女王めがけてファイアー・ボールを発射! 単体では呪文抵抗を持っていないため、難なく命中。セーヴに成功されてしまいますが、蓄積されたダメージは女王の悲鳴を引き出すに十分な量でした。

hpを半分まで回復させたルインは、《一撃離脱》で再び斬り込み、ミューと挟撃して自慢のコンビネーション・アタックを叩き込みます。ミューの攻撃が1発クリティカル・ヒットし、2人で85点ものダメージを叩き出しました! さすがにこれには女王も耐え切れず、断末魔の奇声をあげながら崩れ落ちました。

最後は生まれたての板金を袋叩きにして戦闘終了。何とか死者を出さずに勝利を勝ち取ることができました。





戦闘終了後、部屋を<捜索>すると、あるわあるわ…オーブがゴロゴロと出てきました。そのうちの1つが管理用のオーブだったので、それを使用して軍事情報を管理しているオーブを割り出し、質問開始。数十分後、以下のことがわかりました。









[スリヴァー]
古代の森に生息していた生物。それに人間たちが品種改良を重ねた上で、群れに金属スリヴァーを紛れ込ませることでコントロールしていた。金属スリヴァーは外部から指令が送られてこない限り、スリヴァーの群れの一部として行動していた。



[巨大兵器]
コードネームはドラコ。太古の対耐魔生物用の決戦兵器として建造された人造のドラゴン。動力には輝石と同等の技術が使われており、強大な戦闘力を誇ったが、最後の戦争で大破。記録上では戦天城とともに放棄されている。



[最後の戦争] 古代の魔獣が大量に都に押し寄せてきたために勃発した戦争。オーブに記録されているのは中盤までであり、その時点では人類が優勢だった。が、そこから戦闘の記録はぷっつり途切れ、残っているのはドラコの大破、戦天城の落城と散々たる結果だけである。



[空に浮かぶ巨大な城]
その名は戦天城。古代文明の重要拠点であるとともにドラコの整備施設だった。ここもやはり、スリヴァーの大群と大量のゴーレムで守られていたようだ。



[古代の魔獣]
オーブから出力された映像を見る限り、今まで組織絡み、シュリエック絡みで戦闘を繰り返していた生物によく似ている。が、細部に違うところがかなり見られるようだ。










あらかた情報を引き出したところで、管理用のオーブがあれば他全てのオーブにアクセスできることに気付いたため、持ち出すのは管理用のオーブ1つにしました。

また、それら以外の財宝はあまりパッとしなかったのですが…図書館の本に紛れるように、1冊だけものすごい本がありました。その名は「トウム・オヴ・リーダーシップ・アンド・インフルエンス+5」。魅力値が5ポイントも上昇する非常に高価な財宝で、市価は137,500gpになります。桁が多すぎてボクらにはいくらかわかりません。

一行の中で魅力値を有効活用できるのは、やはり魅力値参照で呪文を発動しているグレンです。早速グレンがこの本を読み、男前になって帰ってきました。しかし取り立てはキチンとする方向で話がまとまり、結果としてグレンは、自身の成長と引き換えに莫大な借金を負うことに。これで彼女達から逃げることはできなくなり、いよいよもって、世界を救う旅に強制同行させられることになったのでした。実にめでたい。





こうして、無事に地下遺跡からの生還を果たした一行。結局輝石が封印されているという戦天城へのアクセス方法は分からず終いでしたが、今回は様々な情報を入手することができましたし、便利な辞典も手に入りました。シボレスへと戻った一行は、身体を休め、支度を整えて、グレイホークを目指してまた北上して行くのでした。





戻る