第12話  憎しみという名の刃  前編




ロルソンの依頼で向かった銀の森。そこで見たものは闇の組織、エリスヌル・コンフィダントの邪悪な実験。そしてそこで出会ったのは、かつてレイムが住んでいたアウストの森を滅ぼした魔道師ゼッペス。ほんの僅かではあるものの、ついに一行は敵の組織の情報を掴んだのでした。





町に戻って何日か経ったある日、新たな事件が起こります。宿で遅めの朝食をとっていた一行のもとに、突然前回の依頼主、ロルソンが飛び込んできます。

彼の話では、郊外にあるグランド・ストーン魔法学院がモンスターの襲撃を受けて壊滅したのだとか。生徒や教師の避難は済んでいるのだが、このまま放っておいたら町にまでモンスターが入り込んでくるかもしれません。軍の出動には長い準備時間が必要なため、腕利きの冒険者を先発隊として調査に送り込みたいのだそうです。

危険な仕事ですが…先日銀の森を救った実績も考慮した結果、この町で一番信頼できる冒険者は彼女達以外にいないと、そう判断した上での依頼なのだそうです。善人揃いのこのパーティがこんな話、道徳的に断れるはずもありません。が…彼女達が考えていたのはエリスヌル・コンフィダントがこの件に関わっている可能性でした。

ロルソンから聞いた話によると…グランド・ストーン魔法学院を襲ったモンスターは巨大な虫のような姿をしており、教師や生徒が放った攻撃魔法を次々と無効化していったのだそうです。…そう、彼女達はかつてこのようなモンスターと戦ったことがあります。





































































まさかねー☆







再びあんな強敵と戦わなければいけないのかと思うと決心が鈍りますが、この町の人々を見捨てるわけにはいきません。覚悟を決めた一行は、準備と情報収集をした後に、郊外のグランド・ストーン魔法学院へと向かいました。





大きな校門の向こうの広い広い中庭には、巨大な昆虫(のようなモノ)がガサガサと動いていました。巨大ヒヨケムシとはだいぶ姿が違いますが、こいつらがこの学校を襲撃したのは間違いなさそうです。門を開いて敷地内に飛び込み、戦闘開始です。

敵はオリジナル・モンスター、ピンチャー・ビートル(はさみカブト虫)です。巨大な大アゴと高い筋力、さらには呪文抵抗まで備えた凶悪な魔獣です。確かにこんなやつが現れたら、魔法学校のみなさんはひとたまりもないでしょう。

レイムのコール・ライトニングが呪文抵抗を破って命中すると、ルインミューが挟撃陣形を組んで一気に瞬殺。残るは1体、誰もが「いける!」と思った次の瞬間…彼女達は敵の真の恐ろしさを知ります。

基本攻撃ボーナスが+15、噛みつきを当てた瞬間、即座に組み付き判定を行える。その際の修正値は+19…これが敵の基本スペックです。PC達のACはみな20前後。組み付き修正値は、一番高いルインでさえ+12…つまり、高確率で攻撃をもらい、そのまま組み付かれるということです。

巨大な大アゴで挟み込んだPCを盾にしつつ、そのまま振り回して攻撃してくるため、非常に厄介です。攻撃なんてしようものなら、味方に当たってしまう可能性があるのでなかなか攻撃ができません。残った1体にかなり苦戦しますが、数ラウンド後に何とか撃破。校舎に入る前に、校庭内に潜んでいる敵を全滅させておこうと判断し、探索開始。苦戦の末にもう2体のピンチャー・ビートルを撃破し、校舎内に突入します。





校舎は2階建て。中はかなり広くなっていましたが、部屋数自体はそれほど多くないようでした。最初の部屋でミューが<聞き耳>に失敗し、頭上に潜んでいたピンチャー・ビートルに気付けず、奇襲を受けてしまいます。

ルインが2体のうちの1体にはさみ込まれ、室内で孤立。残りの1体は、いったん廊下に出たミューを追って飛び出していきます。なかなか組み付き対抗ロールに勝利できず、hpが徐々に削られていき、まさに絶体絶命…と諦めかけたその時、レイムがキュア・クリティカル・ウーンズをサモン・ネイチャーズ・アライXに置換して、大型のファイアー・エレメンタルを召喚しました。圧倒的な攻撃力を持つピンチャー・ビートルの弱点は、hpが50前後しかないということ。ミューとファイアー・エレメンタルが廊下に出てきた敵を挟撃で沈めると、急いで室内に突入。ちょうどその頃、ルインがボロボロになりながらも何とか脱出に成功していました。戦闘をファイアー・エレメンタルに任せ、レイムから治癒呪文をかけてもらい、何とか一命を取り留めました。そして次のラウンドには、室内の怪獣大決戦も終了していました。





この段階で解ったことは、敵とサモン・ネイチャーズ・アライの圧倒的な強さでした。レベル4ではジャイアント・クロコダイルが呼べるようなので、まだまだ奥に進めると判断した一行は、探索を再開します。その後、合計で5体のピンチャー・ビートルを撃破し、全ての部屋を探索し、1階を制圧することに成功。この段階でパーティの消耗がかなり激しかったため、いったん引き返すことに。…そりゃあ、9LVのPCが3人と動物の相棒1匹のパーティで脅威度8を11体倒したら、そらすっからかんにもなりますよ。

帰り道、学校関係者の避難所に立ち寄って、学園長に見張りの依頼をしてきました。我々の休息中に、敵に動きがあるといろいろと面倒なので、夜の間に2階から1階に敵が下りてきたかどうかを使い魔に見張らせてはくれないかと頼んでから、一行は宿に戻って休息を取りました。ここで、PC達のレベルは10にアップしました。



翌日、見張りをしていた使い魔から重大な報告を受けました。巨大なクモのようなモンスターが1匹、2階から1階に下りてきたそうです。

















































神様…




















どうかコイツじゃありませんようにッ!!







願いは通じず、校舎に入ってすぐのところでエンカウント。その姿を我々が見間違えるはずがありません…まごうことなき巨大ヒヨケムシでした。

しかし、覚悟を決めて戦ってみると思ったよりもずっと楽でした…先手を取ったレイムがサモン・ネイチャーズ・アライWで、敵の真後ろにジャイアント・クロコダイルを召喚するように宣言。ルインが1発攻撃をもらってしまいましたが、ミューとともにイニシアチブ・カウント低下させ、クロコダイルが出てきたタイミングで行動開始。5フィート・ステップで間合いを詰めて挟撃陣形を取ります。そして…



ワニの攻撃 → ミューの「追い討ち」能力による機会攻撃(急所攻撃) → ルインの全力攻撃×2 → ミューの全力攻撃(急所攻撃)×2
= オーバーキル!!



1ラウンドで100点近いダメージを受け、巨大ヒヨケムシは息絶えました。…そうです、ローグLV10になったミューは「追い討ち」という特殊能力を習得していたのでした。かつて苦戦した巨大ヒヨケムシに圧勝したおかげで自信がついたのか、一行は強気な姿勢で2階へと上がっていきます。ちなみに、ここで呼んだワニは、そのまま時間が許す限り連れて行くことにしました。

クロコダイルの助力もあり、比較的リソースの消耗を抑えて進むことができた一行。2階に巣食う魔獣どもをすべて駆逐し、最後に残った屋上へとあがって行きます。





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