決戦 〜虐殺の砦〜 後編
2階にはブリーフィング・ルームと指揮官の部屋があるだけということは、兵士達から事前に知らされていました。階段を上った一行はまずブリーフィング・ルームに突入。
巨大な木製の机と、壁に貼り付けられた地図などからは当時の名残が感じられますが…今では見たこともない装置やガラクタが散乱していました。そして部屋の中央には、前回の遺跡で目にしたような、人型の人造兵器が立っていました。慌てて武器を構えましたが、どうやら動き出す気配はありません。レオンが<捜索>をすると、背中には例の鍵穴が…リベルカはこの兵器を動かすために鍵を狙っていたのでしょうか?
触らぬ神になんとやら。こいつは無視して、いよいよこの砦最後の部屋…指揮官の部屋へ突入です。
リベルカ 「あら、遅かったわね。その様子だと道中、私の下僕達にかわいがってもらったみたいだけど…どう、楽しかった?」
部屋中に、爆発によってできた焦げ跡があり、6箇所ほど人型の跡がついていました。壁に付けられた蝋燭には火が灯っており、奥にある机にはリベルカの姿がありました。彼女は一行の姿を肩越しに確認すると、パタンと本を閉じ、ゆっくりとその場に立ち上がりました。
レオン 「楽しんだか…だと? ふざけるなよ!」
アリシュア 「この砦の人達が一体何をしたと言うのです! どうしてこのような事を!」
リベルカ 「どうして? 交渉材料のためよ。」
イリード 「交渉? 笑わせないでよ、あんたがやってるのはただの脅迫じゃない!」
リベルカ 「そんなのどっちでもいいのよ。町の連中にあなた達が捕まえられればそれでよし。」
イリード 「………………。」
リベルカ 「そうでなかったとしても、こうしてあなた達はここまでやってくる…自分達の意思でね。どう? いい策でしょ?」
ディザーカ 「町の人達まで利用しやがったな…」
リベルカ 「ええ、傑作だったでしょ、町の連中! デーモンが約束なんて守るわけないのに、必死になっちゃって! ほんとバカみたい!」
アリシュア 「あなたという人は!」
リベルカ 「残念だけど人じゃないの。さぁ、早く鍵を渡してくれない? 持ってるんでしょ?」
レオン 「ふざけるな! 誰が渡すか!」
リベルカ 「その鍵がないと、ここら辺の遺跡に眠る兵器も、会議室にある兵器も動かせないのよねぇ………そうだ!」
ディザーカ 「…………?」
リベルカ 「鍵を渡してくれたら砦も返すし、あなた達にも危害を加えないって約束するわ。どう? 悪くない条件でしょ?」
ディザーカ 「デーモンは約束を守らない…さっきあんたが自分で言った言葉だぞ。」
リベルカ 「あら…先にあんなこと言っちゃったのは失敗だったかな、フフフ…」
イリード 「っていうか、あんた何か勘違いしてない?」
リベルカ 「は? 勘違い?」
アリシュア 「あなたがたとえ約束を守ったところで、犠牲になった人達は帰ってきません。」
イリード 「それだけのことをしでかしたあんたを、あたし達が許すとでも思ってんの?」
リベルカ 「……フフ………アハハハハハ!! おもしろいことを言うのね、人間って!!」
レオン 「追い詰められてるのはあんたの方だってことに、どうやら気付いてないみたいだな。」
リベルカ 「本当に馬鹿ね。計算通りに誘き出されておいて、よくそんなことが言えるわ。」
ディザーカ 「あんたの計算通りに事が運ぶのは、ここまでってことだよ。ここからは俺達の番だ!」
リベルカ 「いいわ、二人ぐらい殺せば減らず口も叩けなくなるでしょ! さぁ、地獄のリズムで苦痛のダンスを躍らせてあげるわ! 楽しませて!」
イリード 「苦痛のダンスを踊るのはあんたの方よっ!」
ディザーカ 「アリシュア! 今だ!」
アリシュア 「ペイロア様…御力を!!」
アリシュアが掲げた聖印から眩い光が放たれると、一瞬驚愕の表情を浮かべたリベルカは、次の瞬間にはもう苦痛にのたうちまわっていました。
リベルカ 「あああああぁぁぁぁっ!! そ、そんな! 力がっ! な、何なのその聖印はァァァッ!!」
イリード 「調子乗ってんじゃないわよ! あたし達が無策で飛び込んでくるワケないでしょうが!」
リベルカ 「いっ、いい気にならないでっ!! これでも…あなた達を殺すには充分よっ!!」
レオン 「なら、試してみろよッ!」
ディザーカ 「行くぞみんな!」
こうして最後の戦いが始まりました。事前に入手しておいたペイロア神の聖印がブッ刺さり、勝機も見えてきました。
ディザーカとレオンが一気に飛び込んで攻撃を仕掛けます。続くリベルカの手番、彼女は翼を広げて天井付近まで移動して距離を取りました。イリードはこれに対応するために、懐からフライのスクロールを取り出しますが…標準アクションしか残っていなかったのでこの発動を待機アクションとして備えます。トリガーは「ディザーカが手の届く範囲に来たら。」
2ラウンド目。ディザーカは「早抜き」で+1フレイミング・コンポジット・ロングボウを構えてリベルカに発射。そしてイリードの前まで移動してフライの効果を得ます。しかしレオンが以外の3人がまとまった地点めがけて、リベルカの掌からファイアー・ボールが放たれます。セーヴに失敗したアリシュアと、もともとhpが低いイリードにとっては致命的なダメージとなります。
レオンは上空に足止め袋を投げるなどして戦況を好転させようとしますが、なかなか当たらず…イリードの呪文も半分近く呪文抵抗に弾かれていきます。飛行して接敵したディザーカはダメージとプレッシャーこそ与えるものの、防御的発動を駆使されて呪文の発動を阻害することはできません。
聖印で弱体化させたとはいえ、未だ強大な力を持つリベルカが放つ攻撃呪文の威力は凄まじく、徐々にアリシュアの回復も追いつかなくなってきます。しかしリベルカの表情も決して穏やかではありません。もう一息で倒せる…まさにその時、ディザーカの一撃がリベルカの肩口を深く斬り裂き、リベルカは鮮血を吹き出しながら落下していきました。
リベルカ 「がっ…ゴホッ……そん……な………」
レオン 「ハァ…ハァ…勝ったのか!?」
アリシュア 「お…恐らくは……」
ディザーカ 「勝った、勝ったぞみんな! やったな! グレイトだーッ!!」
イリード 「なぁに言ってんのよ! あんたが一番グレイトだったじゃない、もうっ!」
レオン 「終わったんだよな、これで。」
アリシュア 「ええ…帰りましょう。トーチ・ポートに。」
こうして事件は、リベルカの死をもって幕を閉じました。死体は念のためにトーチ・ポートまで持ち帰り、ヒルガ大聖堂で然るべき処置を取ってもらうことに。
数日後、砦から救出された兵士と侍女の証言もあり、今回の事件は白日の下に曝されることとなります。一行の活躍ももちろんですが、評議会の行った行為(PC達に冤罪を着せたこと)も明るみに出てしまい、「非人道的な行為だ。」と町民から大ブーイングを受けました。これには、一行が事件を解決してトーチ・ポートを救ったという結果と、ペンズがメディアを巧みに利用して民衆を煽ったことが大きく起因しているのですが…
こうして議会の構成員の大半は辞職を余儀なくされ、大幅なメンバー変更がなされたとか。そして新たに再編成された評議会の有力者として、ペンズやハーティが名を連ねることとなったそうです。こいつら、恐らく冒頭でPC達を庇ってくれたのでしょうけど…実にちゃっかりしてます。
決戦の場となったフィガロ砦には、新たに兵士達が送り込まれ、少しずつではありますが復旧が始まりました。
そして、事件を解決した一行はというと…町内ではすれ違う人も思わず振り返るほどの有名っぷりとなりました。ちょっとした英雄扱いですね。
事件後、イリードは魔法院の院長であるマルダーから、正式に卒業証書を授与されました。しかしこれはあくまでも今回の功績と彼女の実力を認めた上での特例措置であり、今後も生徒として施設の利用や講義への出席を許可するということとなりました。秘術呪文と出会って…魔法院に入学して3ヶ月程の彼女が卒業証書を手にした噂は、その日のうちに学院中に広まりました。生徒達だけでなく教師達までもが、さらなる修練を積まなければと決意するきっかけとなったようです。院長はこれを見越してイリードに卒業証書を渡したのか…真相を知るものは本人以外には誰もいません。
ディザーカは夢の中でグインハーウィフ(バーバリアンの守護者を務めるセレスチャル)という神の啓示を受け、1週間程どこかへと旅に出かけてしまいました。普段身近に入るバークやレオンにさえも詳しく話さずにフラッと出て行ってしまったので、捜索届けを出す出さないのちょっとした騒動にもなりましたが、再びブレイヴ・クルーズ・インへと戻ってきた時には、彼は聖戦士としての新たな道を歩み始めていました。
(これはゲーム的に言うと、PHBUに記載されているキャラクターの再構築を適用しています。ファイターとバーバリアンのマルチクラスだったディザーカは、そのクラスレベルを調整してチャンピオン・オヴ・グインハーウィフのクラスを獲得しました。)
そしてアリシュアとレオンは…
レオン 「…………………。」
事件後、レオンはたまに聖堂にやってきては、こうして一言も喋らずにボーっと神像を眺めるだけの時間を過ごすことが多くなっていました。
アリシュア 「レオンさん…? どうかしたんですか?」
レオン 「えっ? あ、アリシュアさん! …いや…その…」
アリシュア 「もしお暇でしたら、聖堂の掃除を手伝ってくださいませんか? 一人だと広くって…」
レオン 「あ、はい。別にいいですけど。」
掃除中もレオンの様子は変わりませんでした。しかし、自分から話し出すまでは何も聞かないように徹していたアリシュアの気持ちが通じたのか…掃除が終わるとレオンは心の奥に秘めた想いを伝え始めました。
レオン 「俺…ギルドに入ろうと思うんです。」
アリシュア 「ギルド…ですか。」
レオン 「はい。今回の事件でたくさんの人が死んでしまった…原因はこの鍵です。俺がこんなもん拾っちまったから…」
アリシュア 「………………。」
レオン 「生き残った俺に何が出来るか、ずっと考えてたんです。…俺は、死んでいった人達に恥じないぐらいの男になりたい。…立派な男に…」
アリシュア 「レオンさん、自分を責めないでください…」
レオン 「そんなんじゃないんです! 俺はっ!」
アリシュア 「レオンさん、悪事の原因となったものが必ずしも悪とは限りません。」
レオン 「…え?」
アリシュア 「悪いのは鍵を見つけて拾ったレオンさんではなく、悪事を行ったリベルカです。……それに…」
レオン 「…………。」
アリシュア 「もしその鍵がリベルカの手に渡っていたら、古代兵器が動き出し、もっと大勢の人が犠牲になっていたでしょう。」
レオン 「それは…」
アリシュア 「レオンさんはそれを未然に防いだんですよ。立派な行いです、何を恥じる必要があるんですか?」
レオン 「でも…それでも俺はっ! もっと多くの人を救いたかった!
アリシュア 「……………。」
レオン 「だから俺、ギルドに入ります。経験を積んで、もっと強くなるためには、それが一番いいかなって…」
レオンのその言葉を耳にしたアリシュアは、まるで何か眩いものを見ているかのように目を細めました。……そして次に優しい微笑みを浮かべながら、右手でレオンの前髪を上にどけ、そこに………。
レオン 「!? な、ちょ、え、うぇ!? あ、あ、ああ、あ、アリシュアさん!?」
アリシュア 「成長しましたね。ギルドに入っても今の気持ちを忘れないでください。レオンさんならきっと、自分の理想にたどり着けるはずです。」
レオン 「ハ、ハハ、ハ、ハイ!! ガガ、ガンバッテキマス!!」
聖堂内の長椅子に足をぶつけたり、扉に肩をぶつけたりしてよろめきながらも、猛ダッシュで聖堂を出て行くレオン。それを見送った後、アリシュアは聖母のような微笑を浮かべて呟きました。
アリシュア 「私も……負けていられませんね。」
〜数日後、ブレイヴ・クルーズ・イン〜
レオン 「というわけで、俺はギルドに入った!! もう無職じゃない!! そこんとこ覚えとけよな!」
イリード 「……っていうかなに? あんたそんなくだらないこと伝えるためにあたし達を呼んだの?」
レオン 「仲間の門出だろ! くだらないってことあるかぁっ!」
イリード 「あんた、自分がどんだけスタートで出遅れてるかわかってるの?」
アリシュア 「ま、まぁまぁイリードさん。せっかくレオンさんがやる気になってくれたんですから。」
ディザーカ 「やったなレオン! とうとうやったんだな!」
レオン 「おう、おう! 今まで苦労かけたな、ディザーカ!」
ディザーカ 「言うな! ほら、これは俺からのお祝いだ!」
レオン 「………うっ…うぅ……友よォォォォォッ!」
イリード 「馬鹿馬鹿しい……ねぇ、もうあたし帰っていい?」
アリシュア 「そんなこと言わないで、ほら、イリードさんからも。」
イリード 「…ま…まぁ……その……おめでと…」
レオン 「ん? イリード、何か言ったか?」
イリード 「な、何も言ってないわよっ! ふんっ! あんたなんか三日ぐらいでだるくなって辞めるに決まってるわっ!」
レオン 「ばっ、バカなこと言うな! そんなワケあるか!」
イリード 「だったらせいぜいがんばって働くことね! 中途半端で投げ出したら拷問なんだからねっ!」
レオン 「…行っちまった…くそっ、なんなんだよあいつ。恐ろしい捨て台詞吐きやがって。」
ディザーカ 「うーん、俺はイリードなりに励ましてくれてたと思うけどなぁ。」
レオン 「そうかぁ?」
アリシュア 「うーん、どうでしょう?」
レオン 「まぁいいや! それより今日はパーティーしましょう! ディザーカ、じゃんじゃん持ってきてくれ!」
ディザーカ 「グレイト! 残さず食っていってくれ!」
ローグ 「おい新入り! 仕事だぞ、早く準備してついて来い!」
ディザーカ 「おっ! レオン、やったな! 初仕事だ!」
レオン 「えぇ〜? 今日はいいよぉ! せっかくのパーティーだろ〜?」
全員 「…………………。」
レオン 「アレ? 何この空気?」
ローグ 「この大バカ野郎ッ!! さっさとしろっ!!」
レオン 「いっ、いてててててっ! やめろっ! 放せよっ!」
ディザーカ 「…ん? どうしたアリシュア。」
アリシュア 「……いえ…なんでも…」
今日も平和な一日が始まりました。