第13話 穢れた楽園 中編
突如目の前に現れた不気味な村へ足を踏み入れた一行。先刻ミューが感じた嫌な肌寒さが全身にまとわりついてきます。
いくつかの建物はところどころ風化し、ボロボロに崩れ落ちていました。が、依然として原型を留めている家屋が何軒かあったため、その中に入って調査を進めることに。
一番最初に一行が入ったのは、村の中央にある少し大きな1階建ての建物でした。どうやらそこは村の共同倉庫として使われていた場所のようで、農具や用途のわからない器具などが集められていました。そしてその物陰で蠢く謎の物体をミューは見逃しませんでした。
敵の名はネクロプラズム。怪しげな風貌と鼻に突き刺さる腐臭から察するに、健全でまともなモンスターではなさそうです。この倉庫内にはこいつらが3体、のそのそと蠢いていました。
一行はイニシアチブを制し、先制攻撃を仕掛けます…が、ミューは敵の急所を見定めることができず、攻撃するもぶよぶよした粘体質の体にはまるで手応えがありません。(ルール的には、このモンスターが持っているアンデッドの種別特徴とダメージ減少10/銀の効果) ルインも大刀を振り下ろしますが、同様に効率よくダメージを与えることができず、表情を曇らせます。アルにいたってはもうどうしようもありませんでした。
そしてネクロプラズムの番、悪夢のような攻撃が一行を襲います。ネクロプラズムは自分の周囲20フィート以内にいるすべての生きているクリーチャーに、毎ラウンド1d6ポイントのダメージを与え、その半分を一時的hpとして吸収するという外道極まりない能力をお持ちでした。常在能力らしく、アクションの消費も一切ありませんでした。
3体が密集しているところに果敢に飛び込んでいったルインとミューは後悔しても悔やみきれません。都合3d6ポイントのダメージを強制的に与えられた後、敵の通常攻撃に襲われます。通常攻撃は頑健セーヴに失敗すると1d6の耐久力ダメージを与えてくる近接接触攻撃…なんかもうこいつらの存在そのものが鬱陶しくてたまりません。ミューは回避、ルインは接触されるも何とかセーヴに成功し、2人とも無傷でこれを切り抜けます。
苦戦の予感を感じ取ったグレンとレイムは、魔法での一掃を計画します。2人ともイニシアチブ・カウントを遅らせて、前衛2人に行動を渡します。ルインとミューは後衛からの指示通り、敵から離脱。このタイミングでレイムのフレイム・ストライクとグレンのファイアー・ボールが文字通り火を噴き、敵を一掃。
その後、倉庫の奥の扉を開けて次の部屋に進んだところで、ミューが何者かから奇襲を受けます。攻撃と同時に姿が現れたところを見ると、どうやらインヴィジビリティをかけていたようです。
新たに現れたモンスターはソウル・ハーヴェスター。巨大な鎌を両手で構えた醜悪なモンスターです。ハーヴェスターってのは"収穫者"って意味ですが、こいつが収穫してるのは小麦でもオレンジでもなく、見た目でわかる通り人間の魂です。もうちょっとロハスな方向に進めなかったのだろうかと敵ながら思います。
イニシアチブを取られ、2回連続でミューが攻撃を喰らい、回復のために一旦後退。前線はルインが支えますが、攻撃はまたもダメージ減少に阻まれてしまいます。それどころか、敵が《善を討つ一撃》を宣言してきて手痛い反撃を喰らうハメに…
しかしこの窮地をグレンのマジック・ミサイルが救います。確撃+軽減されないダメージソースとして、敵のhpをじわじわと奪い取ります。4対1ということもあり、数ラウンド後にPC側が勝利。
その後倉庫内を<捜索>し、上質な装飾が施された鍵をゲット。他の家屋を回ってみることに。
村中をレイスやネクロプラズムが徘徊しており、どこへ行ってもアンデッドとの戦闘が起こります。急所攻撃ができないミューは若干不満そうです。ある民家でソウル・ハーヴェスターを倒して、パズルのピースのような金属片を入手。そして別の家屋では、同じような金属片と、冒険者らしき人の白骨死体と書記を発見。早速読んでみることに。
これを見ることの出来る者がここに来るかどうかは分からない。だが、来てしまった者はあの化け物と遭遇しただろう。そして、分かったはずだ。あの化け物の強さを。
奴等相手に何の準備もなく戦闘をするのは危険だ。我々もあと少しであの化け物の仲間入りを果たすだろう。その前に我々のような者をもう出さないように分かっていることをここに書いておく。
あの化け物は銀でできた武器に弱いようだ。銀製のダガーで攻撃したところ、奴等の固い粘膜を超えてダメージを与えることが出来た。また、奴等の生命力吸収は効率が悪いらしく、奪った生命力の半分程度しか回復していないようだ。
この化け物とは別に倉庫の近くにある大きな廃屋付近には近寄らない方がいい。そこには強大な亡霊がいる。我々はその亡霊と戦い、大きく戦力を削られ、今、こうして化け物どもの仲間入りをしようとしている。
まだこの村について書きたいことはたくさんあるがもう時間のようだ。
健闘をいの
書記はここで途切れていました。
なるほどなるほど、やつらの弱点は銀製の武器ですか。誰も銀製の武器なんか持っちゃいねぇや、ハハハ。
さておき、今まで出会ったモンスターも十分に外道だったのですが、まださらに強大な亡霊がこの村のどこかに潜んでいるということも書かれていました。この書記が書かれてからの長い年月のうちに成仏してくれていることを、心の底から願うばかりです。
一通り建物の中は調べ終え、残るは村の奥にある大きな館と、冒険者の書記に書かれていた、強大な亡霊が出るらしい廃屋のみとなりました。いずれにせよ、今のコンディションを考えるとこれ以上の探索は危険…ということで、一度ニオル・ドラへ引き返すことに。不安ではありましたが、結界などはなく、無事に村から出ることができました。
そして翌日。たっぷりと身体を休めた一行は、シルヴァーシーンを購入するなどして準備もしっかりと行いました。そしていざ出発! …したところで、予想外の事態が町を襲いました!
ルイン 「よし、それじゃあ出発するか。」
町民A 「うっ、うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
町民B 「化け物だぁぁぁぁっ! 助けてくれぇぇぇっ!」
レイム 「え!? な、一体何の騒ぎだい!?」
ルイン 「わからん! だがよくないことが起こってるということだけは確かだ! 町に戻ろう!」
戻った一行が目にした光景は、ニオル・ドラ内に突如として姿を現した昨日の廃村…そしてそこから湧き出し、町民を脅かしている化け物達の姿でした!
グレン 「これは…悪い予感が的中してしまいましたね…」
レイム 「そんな暢気なこと言ってる場合じゃないだろう! 早く町の人を助けないと!」
町の中に現れた廃村の入り口めがけて全力で走る一行。しかし入り口に到着した一行を待っていたのは…グレーター・ハーヴェスターという大型のモンスターでした。その足元には、町を守るために果敢に立ち向かったであろう冒険者達の亡骸が転がっていました。
グレン 「な、なんですかこいつは!?」
ミュー 「敵じゃない?」
レイム 「それぐらい見ればわかるよ!」
グレーター・ハーヴェスター 「キセキヲヨコセ。」
グレン 「しゃ、喋った!?」
レイム 「輝石…? こいつらの狙いってまさか!」
グレーター・ハーヴェスター 「キセキヲヨコセ。」
ミュー 「くるよ。」
ルイン 「貴様などに渡すか! ミュー、行くぞ!」
ミュー 「うん。」
この村はニオル・ドラへと近づいていたのではなく、一行が持つ輝石へと近づいていて、結果的にニオル・ドラに出現してしまったようです。しかし経緯はどうあれ…というよりむしろ尚更、この村をどうにかしなければいけなくなってしまいました。
というわけで、グレーター・ハーヴェスターとの対決です。先手を取った相手はいきなり擬似呪文能力でアンホーリィ・ブライトを投射! レイムはもともと意思セーヴの値が高いので難なく成功しますが、ルインは失敗し、5d8ダメージ+不調状態に。グレンとミューは中立+セーヴ成功で、ダメージを大幅に軽減しました。
ルインは《一撃離脱》で、ミューは<軽業>でそれぞれ敵の懐に潜り込み、挟撃を成立させます。シルヴァーシーンを使っている暇がなかったため、ダメージは軽減されていしまいましたが、こいつは種別が異形だったため、急所攻撃が成立! 二人でそこそこのダメージを与えます。
レイムはキュア呪文でルインの回復を行い、グレンはマジック・ミサイルを連射して敵のhpを着実に削っていきます。
1周して再び敵の番、不調状態のルインめがけて叩きつけと噛みつきのラッシュで全力攻撃を仕掛けてきます。そして被弾したルインを敵の特殊能力が襲います。能力名は「呪縛」…意思セーヴに失敗すると、1d4ラウンドの間、攻撃ロール、能力値判定、技能判定、セーヴに−2のペナルティを受けるというもの…不調状態と相まってハンパねぇ状態になってしまいました。返しの全力攻撃は1発目しか当てらなかったものの、ミューの追い討ちを誘発させることには成功。後続のミューの全力攻撃と、グレンが放ったマジック・ミサイルによって敵は絶命しました。
街の混乱を沈静化させるのも重要ではありましたが、自警団等の組織がキチンと機能していることと、元を断たねば話にならないということで、一行は村の中に突入して最奥を目指します。
しかし、倉庫の横を通り抜けて奥の屋敷を目指そうとした次の瞬間、一行の背筋に並々ならぬ寒気が走ります。視線を向けたその先には…家屋の壁をすり抜けて近づいてくる1体の亡霊が。書記に残されていた"強大な亡霊"とは、先程戦ったグレーター・ハーヴェスターではなく、今目の前に現れたドレッド・レイスだったようです。
さっきのやつじゃなかったのかよ…
思わぬ強敵の出現に、全員がマジ☆ブッ殺モードへ。グレンがファイアー・ボール+高速化したマジック・ミサイルをブチ込み、レイムがコール・ライトニングを叩き落します。ここで敵が反応セーヴをファンブル! さらに3d6×4のダメージ・ダイスがブン回り、50点超の大ダメージ! 続くルインは移動に際して予備武器として備えていたゴースト・タッチ能力付きの刀を抜いて攻撃。3人が与えた合計ダメージは100点をわずかに超え、哀れドレッド・レイスは行動前にねじ伏せられてしまいました。
息を整えて村の一番奥にある屋敷へ。倉庫で発見した鍵で入り口を開け、中に入ると…そこには目を疑いたくなるような光景が広がっていました。