第15話  凌雲の彼方へ  中編




カードキーを入手した一行は、ロックされていて入れなかった部屋を調べるために引き返してきました。

1部屋目は「地の部屋」という名前が付けられており、カードキーを入手した会議室のすぐ側にありました。両開きの鉄の扉が一行の前に立ち塞がります。扉の脇には、この遺跡の入り口同様に装置が取り付けられており、ミューがその装置のスリットにカードキーを通すことで、鉄扉は重苦しい音を立てて左右に開かれました。部屋の中には…





















すごいのがいました☆






回れ右で全力疾走したくなるようなキングサイズのゴーレムがお出迎えしてくれました。しかしその直後…



音声 「警告。これより警戒モードに移行します。識別コードの確認が取れない場合、直ちに攻撃を開始します。」



ほとんどのPCが「識別コードってなんぞ???」だったところ、グレンが間髪入れずに「104368! 104368!」と絶叫。すると…



音声 「識別コードを確認いたしました。警戒モードを解除します。」





カードキーの裏面に書かれていた数字が、そのまま識別コードだったようです。何にせよ、これで室内のキングは借りてきた猫以上におとなしくなってくれました。

薄暗い室内の四隅には、縦横10フィート、高さは天井まである謎の装置が置かれており、うち3つは「ウォン…ウォン…」と低い音を立てながら動いていました。それぞれの装置にはレバーがついており、これを上げ下げすることで起動と停止を操作できるようです。なんだかよくわからない装置ですが、とりあえず停止している装置を起動するためにレバーを下げてみました。すると「ゥゥゥゥウウウウウ…」と徐々に稼動音が聞こえてきて、全ての装置が起動しました。実はこれで最初に見つけたエレベーターに電力が供給されたのですが、一行にはわかりません。

とりあえず、他にやることもなくなったし、長居してキングの気が変わると洒落にならないので、さっさと退室することに。もちろん扉は厳重にロックしておきました。





一行はさらに入り口の方へと戻り、もう1つのロックされた扉をカードキーで開錠しました。

この部屋は、この施設の責任者の部屋だったようで、室内に置かれた本棚には、丁寧にファイリングされた様々な資料が大量に並んでいました。また、部屋の隅には金庫が置いてありました。かなり難易度の高い<開錠>判定でしたが、ミューががんばって開けてくれました。中には指輪や宝石などの貴金属と、エレベーターキーと彫られた1枚のカードが入っていました。










ルイン 「これが“えれべーたーきー”か。見たところカード状だが、さっきのカードキーとやらと同じような物なんだろうか?」


グレン 「それは間違いないと思うんですけど…そもそも“えれべーたー”って何なんです?」


レイム 「アタイは知らないよ。」


ミュー 「…エレベーター…簡単に言うと、上下に移動する小部屋みたいなもの…」


ルイン 「え?」


ミュー 「…大丈夫…電力供給はさっき済ませた…キーを使えば上のフロアに行ける…」


グレン 「ちょ、ちょっと待ってください! 何の話ですか? どうしてそんなことがわかるんですか?」


ミュー 「…なんでだろ…?」


レイム 「確かミュー、昔の記憶がないって言ってたよね。」


ミュー 「…うん…」


ルイン 「ひょっとして、この遺跡がミューの記憶に何か関係しているのか?」


グレン 「それはないでしょう。だってこの遺跡が機能していたのは超が付くほど大昔なんですよ?」


ルイン 「た、確かにそうだが…」


レイム 「まぁまぁ、ここであれこれ言ってたって何もわかりゃしないよ。それより先に進まないかい? エレベーターってので上に行けるんだろ?」


グレン 「レイムさんの言うとおりですね。そうしましょう。」


ミュー 「………。」


レイム 「心配するんじゃないよ。先に進めばまた何か思い出すかもしれないし、考えるのはそれからでも遅くないだろ?」


ミュー 「…うん…わかった…」





おぼろげながら何かを思い出しつつあるミュー。彼女と古代遺跡の間にどんな関係があるのかは、一行がどれだけ考えたところで結論が出せる問題ではありません。それよりも今は、組織よりも先に戦天城へ上がり、輝石を確保しなければいけません。急いでエレベーターに向かう一行、しかしそこで待ち構えていたものは…





男 「ほう、思ったよりも早かったな…どうやってここを突き止めた?」


ルイン 「ッ!? 誰だ貴様はッ!!」


グレン 「あ、ああぁぁぁーっ!!」


男 「久しぶりだな、グレン・クロウ。元気そうで何よりだ。」


レイム 「ちょ、グレン! こいつのこと知ってるのかい!?」


グレン 「こいつですよ! この鼻の傷! 独りで森を歩いていたところをいきなり襲われて!」


ミュー 「…モンスターにやられたんじゃなかったっけ…?」


グレン 「うっ…」


男(ウルファ) 「他の者達とは会ったことがなかったな。我が名はウルファ。数多の腹心の一員にして、ゼッペスの部下だ。」


レイム 「ゼッペスだって!?」


ルイン 「つまり刺客というわけか…」


ウルファ 「お前達、あのオカマを退けたことがあるそうじゃないか。…ククク…少しは楽しめそうだな…」





禍々しくも不敵な笑みを浮かべたまま、ウルファと名乗った男は、背中からロングソードを引き抜きました。そして…





ウルファ 「我々はすでに他の城より戦天城への進行を開始している。俺の目的はお前達の足止めというわけだ。」


ルイン 「それならば尚のこと、これ以上貴様に付き合っているヒマはない。即刻退いてもらうぞ!」


ウルファ 「ククク…まずは小手調べといこうか。どれほどできるのか、見せてもらうぞ!?」










ウルファと名乗ったこの男こそ、13話目の冒頭でいきなりグレンに斬りかかってきた危険人物です。マッドが言っていた幹部格の剣士というのは、こいつのことで間違いないでしょう。

先手を取ったウルファは、ルインめがけてレイ・オヴ・イグゾースチョンを投射。これに対してルインまさかの頑健出目1…はいはい、知ってた知ってた、ふざけんな!

過労状態によって、筋力と敏捷力は−6、いきなり厳しい状況です。さらにウルファは即行アクションでスウィフト・インヴィジビリティを発動して不可視状態になった後に移動。不可視対策が不完全だったため、全員が効果的な行動を取れず、再び敵の手番、ミューの背後に姿を現したウルファは、ダスクブレードの秘術呪文注入でヴァンピリック・タッチを剣に込め、全力攻撃を宣言。





※ダスクブレードが13LV時に習得する秘術呪文注入(全力攻撃)の特殊能力は、単一の目標に対しては1ラウンドに1回しか、接触呪文の効果を与えることができません。また、武器ダメージの適用後に呪文ダメージが算出されるため、クリティカルした場合においても呪文のダメージが増加することはありません。
本項では上記2点のルールが適用されておらず、当てれば当てただけ、注入した呪文の効果も与えることができ、クリティカルした場合には呪文のダメージも増加するという、超極悪仕様になっています。






1発目がクリティカル、次いで2発目も命中。この時点でのダメージ量は3d8+18d6+固定値というキレっぷり。3発目を待たずしてミューが轟沈。

突然の事態に驚き戸惑う一行。すかさずルイングレンがウルファに攻撃を仕掛けますが、ヴァンピリック・タッチによってもたらされた50超の一時的hpを相殺した程度。敵はほぼ無傷です。アルも足払いを仕掛けるために果敢に前線に出ますが、そもそも攻撃自体が当たりません。

再びウルファの手番。今度はルインに対して、ショッキング・グラスプを注入した全力攻撃を放ちます。過労状態につき、敏捷力−6(AC−3)となり、おもしろいように攻撃が命中します。全弾命中し、hpの7割弱を一瞬にして奪い去られます。返しの全力攻撃は、筋力−6(近接攻撃ロール−3)が大きく響き、命中させられたのは初太刀のみ…しかしその一撃がクリティカル・ヒット! 即座に5フィートステップし、アルも攻撃後に5フィートステップ。こうして遠隔接触攻撃へのペナルティを回避したグレンが、高速化したマジック・ミサイルとスコーチング・レイを発射し、敵に大ダメージを与えます…が…









ウルファ 「…つまらん、やめだ。」


ルイン 「はぁ…はぁ……何だと?」


ウルファ 「期待外れだ、俺が手を下すまでもない。」


ルイン 「貴様ッ、どういうつもりだ! 剣を抜け!」


ウルファ 「続きがしたいのならば上がって来い。…もっとも、お前らの実力じゃ、俺達の元に辿り着くまでにくたばるだろうがな。」










興醒めしたといった素振りを見せた後、剣を収めたウルファは、マジック・アイテムを起動させて姿を消しました。(ブーツ・オヴ・テレポーテーション)

見せ付けられた幹部の圧倒的な戦闘力…4人がかりで挑んだにもかかわらず、まったく相手になりませんでした。失意に暮れる一行は、ミューの蘇生を行うために一度フックヒルへと戻ることにしました。

先日のトゥルー・リザレクション×2が響き、一行はこの時点でほぼ文無しに近い状態。結局、ミューの武器等を売ってレイズ・デッドの費用を補填することに。





翌日、再び遺跡へと戻ってきた一行は、エレベーターを使用して上階へと進みます。2階の間取りは、フロアの中央にエレベーター、そこからXの字型に4本の通路が延びており、その先々には扉がありました。廊下には階下で嫌と言うほど戦ったゴーレム達がウジャウジャいましたが、何とか大きな被害も出さずに撃破。

4部屋のうち2部屋は、それぞれ「太陽の部屋」、「月の部屋」と名付けられており、「光の拳が確認不可。入室を許可できません。」と言われて門前払いでした。残る2部屋のうち1部屋は、「光の部屋」と名付けられていました。名前からして、ここに「光の拳」とやらがありそうだったのですが、こちらはランクAのカードキーがないと開けられない扉でした。

残る1部屋はランクCのカードキーで開錠できました。中はモニター室になっており、壁には多数のディスプレイが埋め込まれていました。ディスプレイには下図のように何かヒントになりそうな画面もありました。






















恐らく、1階の「地の部屋」で行ったように、「太陽の部屋」、「月の部屋」でも何らかのエネルギーを供給する必要があるということでしょうか。

他には、ミューが<捜索>によって、キーボードの陰からランクBのカードキーを発見しました。

現状、2階に入れる部屋はないので、一度3階に上がることに。このエレベーターで行けるフロアは1〜3階までですので、次のフロアが、この遺跡の事実上での最上階になります。





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