第16話 天空の巨城 前編
ミュー 「…ミュー…ここのこと知ってる……ここにいたことがある……」
ルイン 「なっ、何だとっ!?」
レイム 「ミュー、あんた記憶が…?」
ミュー 「…ん…」
グレン 「…ここに"いた"ことがある? ここに"来た"ことがあるではなくてですか?」
ミュー 「ごめん、今は詳しく説明している時間がないから。」
ルイン 「ミュー…」
レイム 「言いたくなけりゃいいんだよ? アタイら、別に詮索する気なんてないし。」
ミュー 「ありがとう。でも、ちゃんと話すから。みんなには聞いてほしい。」
グレン 「わかりました。じゃあ、とりあえず先を急ぎましょう。」
ミュー 「この城の防衛は兵とスリヴァーだけ。罠はないから、この部屋を出たら走ってついてきて。」
ルイン 「わかった、行こう!」
地上の遺跡でも、古代文明についての知識をチラつかせていたミューですが、戦天城の景色を目にしたことですべてを思い出した様子です。彼女が一体何者なのかは、いずれ彼女自身の口から直接語られることでしょう。
ともかく、戦天城への侵攻を開始した一行。ミューの「罠はない」発言を頼りに、最奥部まで全力疾走開始です。
部屋を出てすぐのY字路でアークバウンド・ワーカー2体と遭遇。相変わらずザコのくせに手強い相手でしたが、少ない消耗でこれを撃破。
通路は二手に別れていますが…ミューが南東の通路の先は倉庫、北東の通路の先には他のブロックにつながる転送円があることを教えてくれます。地上の遺跡での損害が著しい(PCの死亡とソラリオンの大爆発による装備消失)ため、倉庫に向かって何か使えそうなアイテムがないか探すことに。
倉庫へ向かう通路にはスリヴァー達がウヨウヨと犇めいていました。複数種が同時に現れると厄介ですが、ゴーレムと違って急所があるため、4人で戦うことができます。そう考えるとスリヴァー達を相手取った方がまだマシです。ミューとルインの連携を主軸に、レイムとグレンの呪文を最小限に抑えて勝利します。
倉庫には、幸いなことにまだ多数のマジックアイテムが残っていました。中でも特筆すべきは、リング・オヴ・ウィザードリィUとダガー・オヴ・スペル・ストアリングでした。指輪はグレンが装備し、ダガーはスコーチング・レイを注入してミューが装備しました。
最初のY字路まで引き返し、一行は北東の通路を進んで転送円を目指します。多数のスリヴァーを退け、奥へ進むと、通路は4本に別れていました。ミュー曰く、右側の2つの通路は居住ブロックに、左側の通路は端から中枢ブロック、中央ブロックへとつながっているのだとか。居住ブロックに用はないので、直接中枢ブロックへのワープを考えます。
相変わらずゴーレム達が一行の行く手を阻みますが、グレンの2レベル呪文スロットが倍になった今、以前よりもザコに回せる呪文の量が増え、戦闘は比較的楽になっていました。
中枢ブロックへと続く転送円は残念ながら破壊されていましたが、中央ブロックへと続く転送円は生きていました。中央ブロックからも中枢ブロックをはじめとする各部へワープできるそうなので、一路中央ブロックへ。
中央ブロックは各ブロックへの中継地点となっているため、転送円の数が10箇所もありました。ここまで的確にガイドしてくれたミューも、あまりの数の多さに、どれがどこに飛ぶためのものか把握し切れていませんでした。それどころか、かつてよくここで迷子になって保護されていたとか…
悩んでいる一行に、見覚えのある虫型の魔獣が殺到してきます。シュリエックの手によって使役されている魔獣がこんなところにまでいるということは、エリスヌル・コンフィダントはもう中枢部にまで侵攻しているのかもしれません。
過去数度にわたって激戦を強いられたピンチャー・ビートルや巨大ヒヨケムシをほとんど瞬殺と言っていい程のスピードで蹴散らし、奥に控えていたギガピードまでも2ラウンドで沈めて勝利。フロア内の敵を速攻で全滅させたところで、1箇所ずつ転送円の調査を始めました。全ての転送円をチェックしたところ、現在稼動しているのはこのフロアにやってくる時に使用したものと、左端のブロックに飛ぶためのもののみでした。中枢ブロックへの直通ルートは、またしても故障中。組織の連中に先回りされた以上、仕方がないでしょう。
左端のブロックにワープしたその先で、一行は人間の姿を目にします。通路にはゴーレムやスリヴァー達の残骸が転がっており、その中で一人の男が、扉の前に座り込んで何やら作業をしていました。
カチャカチャ…
男 「ったく、なんなんだよ。あの機械どもは…あんなのとやってたら命がいくつあっても足りないぜ。」
カチャカチャ…
男 「下の城塞で、連れてきた人間のほとんどが死んじまったしなぁ。その上、お宝もほとんどねぇしよぉ。」
カチャカチャ…
男 「っがー!! なんなんだ、ったく!! 開けよ、このクソドア!!」
ガン!!
ルイン 「な、なんだあいつは?」
ミュー 「多分鍵を開けようとしているんだと思う。でもあんなやり方じゃ一生開かない。…コツがあるのに…」
ルイン 「…そ…そうか…」
グレン 「どうするんですか?」
レイム 「まぁ…とりあえず出てって話でも聞いてみるかい?」
ルイン 「そうだな、まだ敵と決まったわけではないしな。」
グレン 「いや…どう考えても敵でしょう、あれ…」
男 「ん? おい、そこに隠れているやつら! 出てこい!」
グレン 「あ、バレましたよ!」
レイム 「いいんじゃない? どうせ出ていくつもりだったんだし。」
男 「何だお前ら? 見ねぇ顔だな…さては新入りか下っ端だな。」
ルイン 「いや、我々は…」
男(ダン) 「いいか、よく聞け! 俺様はエリスヌル・コンフィダントの最強に名を連ねる五本の牙の一人、ダン様だ!!」
全員 「…………………。」
ダン 「ハハハハハ! 驚きのあまり、声も出ねぇってか!」
ルイン 「スマン、五本の牙というのは…いったい何のことだ?」
ダン 「は?」
グレン 「ひょ、ひょっとして! 例のオカマとか、下で会った根暗そうな剣士と同格なんじゃ!」
ダン 「おいおい待て待て! オカマだとか根暗だとか、そんな妙な連中と一緒にすんなバカ!」
レイム 「一緒も何も、そもそも同じ組織にいるんだから、アンタら仲間だろう?」
ダン 「アホか! ウチの組織にゃそんな不気味な連中いねーよ! てめぇら誰のこと話してるんだよっ!」
ルイン 「確かシュリエックと、ウルファとか言っていたな。」
ダン 「…………へ?」
ミュー 「ルインすごい、オカマの名前覚えた。」
ルイン 「フッ、当然だ。」
ダン 「…シュリエックに……ウルファ…だって?」
レイム 「うーん…でもこいつからは連中と戦った時みたいな、威圧感っていうのかい? そういうのを感じないんだよねぇ。」
グレン 「い、言われてみれば…確かに…」
ダン 「た、戦っただぁ!? あのお方達とか!?」
レイム 「…………へぇ、あの"お方達"…ねぇ?」
ダン 「あ、いや、その!」
ルイン 「格付けはわからんが、とにかくお前は組織の者なんだな。抵抗するというのであればこちらも容赦は…」
ダン 「す、すすす、すいませんでしたぁーっ!」
ルイン 「!?」
ダン 「降参いたします! 命ばかりはお助けをーっ!」
ルイン 「やっ、やめろっ! すがり付くなっ!」
レイム 「あれぇ? アタイ達はアンタらの敵だよ? あっさり降参しちゃっていいのかい?」
ダン 「冗談じゃない! シュリエック様やウルファ様と戦って生きてるようなお方達と、一戦交えようなんて気はございません!」
レイム 「そうなんだ。ふーん、どうしようかねぇ?」
ダン 「お、お願いします! 何でもしますから、どうか命だけはァァァァーッ!」
ルイン 「レイム殿!」
レイム 「ははは! わかってるって、ちょっとからかっただけさ!」
グレン 「……………。」
ミュー 「…? グレン、どうしたの?」
グレン 「…いえ、ちょっと自己嫌悪を…」
彼は先行部隊の一員だったのですが、スリヴァーやゴーレム達に恐れをなし、こっそり部隊から抜け出して、城内の宝を持ち逃げしようと企んでいたところだったそうです。ちなみに、通路のいたるところに転がっているゴーレムの残骸やスリヴァーの死骸は、先行部隊の隊長がほとんど一人で倒したのだとか。
ともあれ、こうして敵の幹部(自称)を生け捕りにした一行は、このブロックの探索を開始します。ダンが開けられずにいた扉は、ミューが扉の横のカバーを外して配線をいじり、あっさりと開けてしまいます。さすがに一同絶句です。中にはスカラベ・オヴ・プロテクションがありました。非常に高価なアイテムが出てきたことに驚きを隠せません。
しかし、さらに奥へと進んで行くと、またも怪しい人影が…
男 「うう、さみしいぜ。なんで俺だけ見張りなんだよ。でも、他に誰もいないしなぁ…ううう、恐くて堪んない。」
レイム 「…なんかまた似たようなのがいるよ…」
ルイン 「何だか気の毒に思えてきた…さっさと声をかけてやろう。おい、そこのお前。」
男 「うわぁっ! …あ、人間…?」
ルイン 「組織の者だな? 抵抗しないというのであれば危害は加えん。おとなしく投降しろ。」
男(バッグ) 「貴様、誰に口をきいている! 俺はエリスヌル・コンフィダントの偉大なる五本の牙の一人、バッグ様だぞ!」
ダン 「あわわわっ! す、すいません、皆様、ちょーっとすいません!」
バッグ 「おお、ダンではないか! ちょうどよい、ここは協力してこの愚か者共に身の程を教えてやろうではないか!」
ダン 「このバカ! このバカ!」
ポカポカ
バッグ 「い、いてて、おい、何をする!?」
ダン 「いいからこっち来い!」
ダン 「……あの方達はなぁ…………」
バッグ 「……え…マジ?」
ダン 「……ホントだよ………だから…………」
バッグ 「…お…おう……わかった……」
レイム 「…何話してんのかねぇ?」
グレン 「あ、戻ってきましたよ。」
バッグ 「もぉぉぉぉぉぉしわけありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ルイン 「うわっ! だから足にすがり付くな!」
バッグ 「数々の非礼、何卒お許しください! 何卒ォォォォォっ!」
ルイン 「やっ、やめろっ! いい加減にしないと斬るぞっ!」
2人目の幹部(自称)を無力化した後、再びミューのスーパー開錠タイムが始まります。同様の手口で扉を開け、中からスキャバード・オヴ・キーン・エッジズとストーン・オヴ・グッド・ラックを持って出てきます。
また、ダンとバッグの口添えで、エリスヌル・コンフィダントが戦利品を置くのに使っていた小部屋を発見しました。その大半は何だかよく分からない機材でしたが、ミューの<捜索>の結果、リング・オヴ・プロテクション+2が見つかりました。
財宝の他に、2箇所の転送円を発見。1つは中枢ブロックへの転送円。そしてもう1つは、エリスヌル・コンフィダント達が侵攻の際に使用した、地上とつながっている転送円でした。五本の牙の2人はもうなんか邪魔になってきたので、地上に送り返すことにしました。今回の恐ろしい体験で彼らも懲りたでしょうし、別れ際にルインが何か説教じみたことを言っていたので、恐らく再び悪事に手を染めるようなことはないでしょう。
そして一行は、もう1つの転送円を使用し、中枢ブロックへと向かいます。